短編2
□どこに行っても
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天気は快晴。
名無しは草原に寝転がり眠っていた。
あたりは暖かい太陽の光に包まれている。
眠りに落ちている名無しのもとに誰かが近寄り、しゃがみこむと名無しの寝顔を覗きこむ。
「…………名無し」
ゆさゆさと肩を揺さぶるが反応がない。
「…………ぶ、ろりー……」
「…………ん」
「一人で……どこかに……行っちゃ、だめだよ……」
一瞬、起きたのかと思い返事をしたが、名無しは寝返りを打ち、そんなことを呟くとまた寝息をたてはじめた。
「…………俺はどこにも行かない」
隣に座ると自身も同じように寝転がり、名無しの寝顔を見つめる。
何の夢を見ているのだろうか。寝言を聞く限り、どうやら自分は名無しの夢の中に出ているのだろう、とブロリーは思った。
自分は気づいていないだけであって、彼を心配させているのではないか、とふと思う。
心配性らしくいつも自分が一人でどこかへ行くと必ず見つけるまで探して、最後には必ずやってくる。
『一人で何処かに行っちゃ駄目だよ』
いつも自分を見つけては、名無しは怒りながらそんなことを言ってくる。
夢の中でも彼は自分を見つけて説教をしているのだろうか。
それでも何故かやめられなくて、いつも一人で知らない所へ行き、
名無しが一生懸命になって自分を探しに回って見つけてくれることを嬉しく感じる。
彼が自分を見つけた時に浮かべる安堵した表情が、ブロリーはとても好きだった。
『良かった、見つかって』
時々、涙を流す時もあるが、そんなときはそっと名無しの頭を撫でてやる。
「…………う」
名無しはブロリーの気配に気づいたのか、ぴく、と肩を震わせ、ゆっくりと目を開けた。
「……ぶろりー……?」
「……ああ」
「……おはよう……ふああ」
「……」
眠たそうにあくびをする名無しの表情を見て、ブロリーは何となく微笑んだ。
最近名無しに会わないと心が落ち着かない。
何故かは自分でもわからないが、明らかに最初に会った頃とは名無しに対する感情が変わっていた。
「またブロリーがどこかに行く夢見ちゃった」
「……そうか」
「……でもね」
「?」
名無しはブロリーの顔を見据えながら、微笑む。
「ブロリーがどこに行っても、必ず見つけるからね」
「…………」
その後自分の言ったことに対して恥ずかしくなったのか、名無しは顔を赤くして目を逸らした。
ブロリーは妙に嬉しくなって名無しを抱き締めた。
「!?」
「……お前、顔が赤いぞ」
「そ、それはブロリーのせいだよ!」
「……俺の、せいか?」
「そ、そうだよ」
「…………名無し」
「な、なに?」
「……心配、してくれて、ありがとう」
「えっ」
予想外の発言に名無しはきょとんとした顔でブロリーを見た。
まさか礼を言われるなんて思ってもいなかったので、しばらく名無しは放心状態になった。
「……れんあいのことはよくわからないが、……俺はお前のことが多分…………すきだと思う」
「…………」
「…………名無し?」
「……あっ!う、うん。そ、そうか。ありがとう!」
どうやらブロリーが名無しを恋愛対象として見ることも、同性として好きになることも、まだまだ先になりそうだ。