短編2

□やっぱり
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「悟天くん」

だから、君付けしなくていいって前から言ってるじゃん。

「なに?」

わざと不機嫌そうに答えてみる。
そしたら君は、また困った顔しちゃってオレから目を逸らす。

「……1つ、聞きたいことがあるんだ」
「なに?」
「……悟天くんって、本当に僕の事好きなの?」
「へ?」

わ、あまりにも予想外の質問してきたから間抜けな声出しちゃった。

「え〜何?突然……」
「……答えて。どうなの?」

真面目な顔するものだからついオレも真顔になっちゃって。

「好きに決まってるじゃん。心配しないで」
「……」

えっ、何で黙っちゃうの?
まだ不安の色は消えていないみたいな顔しちゃって、オレもちょっと焦る。
まさか、信じてない?

「……ほんとに?」
「うん。ホント。嘘つかないよ?オレ」
「……嘘吐き」
「え……」

君はそう言って俯く。
一気に空気が重くなった。頬杖をつきながらオレはだんまりになった君の顔を覗き込む。

「悟天くんの、嘘吐き!」
「えっ、ちょっ、待ってよ!いきなりどうしたの?」

一応ここ店の中だし人もたくさんいるんだからさ……なんて思ってる場合じゃないや。
だって泣いてるもん。とりあえず落ち着かせなきゃ。オレも落ち着いてないけど。頭の中がぐちゃぐちゃだ。

「とりあえず落ち着こ?えーっと……まず泣き止んで」
「ううっ、ごて、んくん、うそつき」
「……なんでそう思うの?」
「だって、いつも悟天くん、ひっ、女の子と、っう、ばっかり話してるし……デートもしてるし……
ほんとは僕の事、好きじゃないんでしょ……」

なーんだ。そんなことだったんだ。
……なんて、そんなこと言ったら君、怒るよね。

「……わざとだよ」
「え?」
「……ひどいこと言っちゃうとね、君を嫉妬させたいんだ」
「……嫉妬……?」

あ、やっと顔上げてくれた。まだ泣いてる。

「オレが好きなのは、君だけだよ」
「……」
「まだ信じられない?」
「……」
「じゃあさ」

立ち上がって、隣の席に座ると、無理矢理こっちを向かせてキスをした。

「これなら信じてくれる?」
「……っう」
「あ、泣き止んだ」

悟天くん、と小声で言ってきて、不意にどきっとした。
こんな近距離で話すの久しぶりかも。嫉妬させるためにわざと離れてたし。

「……とりあえず、もう女の子と関わるのはやめるよ。嫉妬してくれた?」
「……したよ」
「それならよかった。君を嫉妬させるのが目的だったんだ」
「それだけのために今までずっと女の子と……。意地悪」
「これからはしつこいくらい、ぐいぐいいくよ?覚悟してね」
「……うん」

優しい君が怒ることなんて滅多にないからね。だからちょっと試してみたかったんだ。
でもよかった。嫉妬してくれてるってことは、君もオレのこと好きなんだよね。安心したよ。
だからこれからは、安心して君にもっと絡みにいけるね。

「ね、名無しくん」
「なに?」
「オレさ、君の笑ってる顔好きだよ」
「……そっか」

そう答えると、ふにゃ、と優しそうな笑みを浮かべた。
ああ、やっぱり、笑ってる顔が一番好きだな。

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