短編2

□見つめあいゲーム
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「なー名無し」
「なんすかー」

本を読んでいる名無しになんとなく声をかける。
だるそうな声がすぐに返ってきた。

「暇だからなんかしようぜ」
「なんかってなんだよぉ」

俺は名無しの前に移動して、笑いながら言った。

「見つめ合いゲーム」

名無しは本を膝の上に下ろすとまさに「はあ?」というような顔をした。


「お互い顔を見つめ合って目そらしたら負け。簡単だろ?」
「いやまあそうですけど……勝ったらなんかあるの?」
「褒美目当てか」
「へへへ。あたり」
「やっぱり」

名無しはわざとらしく笑った。まあそういうところも可愛いが。

「じゃー勝ったら負けたほうに何でも命令できるっていうやつでいいだろ」
「やったーそれならいい」
「負けたほうは命令に絶対従わないといけない。だから相当の覚悟を持たなきゃなあ」
「よっしゃー負けないぞ!」

めっちゃ張り切ってるな。……でも名無し、俺は絶対負けないからな……。
覚悟しとけよ!

「……」
「……」
「名無し。照れてるぞ」
「んなっ、照れてないわ」
「顔赤いじゃねえか。ギブ?ギブ?」

わざとらしくニヤニヤしながら言ったら名無しはさらに顔を真っ赤にした。
畜生。可愛い!!!!!
そして、数分後。名無しはついに目を逸らした。

「はい、負け」
「ガーン……」

名無しはがっくりと頭を下げた。
うしし。何を命令しようか。……そうだ。

「んじゃ、名無し。いいか?」
「ううー……どうぞ」
「キスしてくれ」
「ぬぁにぃ!?」

名無しはびくっと身体を反射させ後ろへ下がった。
驚きすぎだろ。

「だってお前自分からしてくれねえじゃねえか」
「そ、それは悪かった……だけど、それはあまりにもきつい命令では…」
「おやおや、それならもっときつい命令を…」
「だーっ!!しますします!!」

可笑しくてしょうがない。だが俺は必死に唇をかみしめて笑いをこらえた。
元々こいつは恥ずかしがり屋だからな。こういうのには弱いんだ。
でもそこが良いんだよな。

「う、動かないでくれよ」
「おう」

名無しの手は俺の肩を掴んでいた。動かないようにするためか知らんが震えてるぞ。

「う、うう……」
「早くしろよ」
「わ、わーってるよ!」

意地悪そうに言うと、ちょっと怒ったような口調で返事が返ってくる。
そーっと、だんだん顔が近づいてくる。
おい、耳の付け根まで真っ赤だぞ…。
そして。ゆっくりだが唇が重なった。

「……」
「……。これで良いか?」
「グッジョブ」
「はぁ〜…」

名無しは安心した顔でほっとため息をついた。
……だが。一個だけじゃないぞ、名無し。

「さーて、次は〜……」
「!?!?一個だけじゃないの!?」
「そんなこと言ってないぞ」
「うわああああああああ」

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