短編2

□ベジットさんと僕A
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「……」

今日は日曜日。
僕は疲労を癒すため今日はなるべく寝ていようかと思っているのですが……無理そうです。

「……あの」
「ん?」
「……くっつきすぎじゃないですかね……?」
「別にこれくらい普通だろ。あ、お前のほっぺ、ぷにぷにしてるな」
「…………だあーっ!今昼食作ってるんですよ!邪魔しないでくださいよー!」

……そう。ベジットさんがやたらとくっついてくるのです。
今も後ろから抱き締められている状態で、全く身動きできない状態です。
……まあ、確かに日曜日になったらベジットさんの相手をたくさんするというのは約束しましたけど……。

「あー……うまそう」
「……お腹空いてるのはわかりますけど、もう少し我慢してください」
「いや……お前がうまそう」
「……は?」
「食ってもいいか?」

いや。いやいやいや。え?いきなり何を言っているんだベジットさんは。
僕を食べたい?いや、さっぱり意味がわからない。

「……いや、あの。僕、食べ物じゃないですよ?」
「知ってるさ」
「……???」

どういうことですか。
そう尋ねようとした時、何か生ぬるいものが首に触れ、一瞬頭が真っ白になりました。

「あ、ひうっ」
「今ぐらいしかお前に触れねえだろ」
「え、あ、ベジット、さ」
「……ん」

ベジットさんは突然首にキスをしてきました。
それから吸い付くようすると、噛みついてきました。僕はすぐにキスマークをつけられたのだとわかりました。

「な、な……ベジットさん!」
「なんだよ」
「つ、つけちゃだめだって言ったじゃないですか!」
「しょうがねえだろ。俺に全然構ってくれなかったお前が悪い」
「そ……そんなこと言われても……」
「俺が待つこと嫌いなの知ってるだろ?」
「ちょ、ちょっと、ベジットさ……!」

服を脱がせようとするベジットさんの腕を掴み、僕は彼を離れさせようとしました。
それでも、いくら力をいれても彼は微動だにしませんでした。

こ……。このままじゃ……抱かれる!!

「か、勘弁してください!」
「無理」
「し……死んじゃいますよ!主に……僕の腰が……」
「痛くなったら会社休めばいいだろ」
「そ、そんな簡単に休めると思ったら大間違いですよ!」

ピンポーン
そんな会話をしていると突然インターホンが鳴りました。た……助かった。
僕が出ます、と言うとベジットさんは舌打ちしながらどいてくれました。……そんな怒らなくても……。

「はい」
「やっほー!名無しおじさん」

彼はゴテンクスくん。
よく遊びにきてくれる少々口の悪い無邪気な子だ。ベジットさんとはよく喧嘩してるみたいです。

「ああ、ゴテンクスくん。こんにちは」
「なあなあ今日暇か?遊ぼうぜ!」
「え……えっと……今日は……」
「こら、ゴテンクス」
「あ。こんにちは。ゴジータさん」

ゴジータさんは、真面目であまり冗談が通じ無さそうな男性。実は、僕と同じ会社で働いてます。
しっかり者で、僕より働いてるのに全然疲れてなさそうなんです。

「すまない、お前と遊びたいらしいんだが……疲れてるだろう」
「た、確かに疲れてますが……ゴテンクスくんが遊びたいのなら……」
「名無しおじさん、バレーボールしようぜ!」
「こら。…………だが、いいのか?昨日も遅くまで仕事していたじゃないか」
「だ、大丈夫ですよ」
「おい、名無し」

突然後ろから声が聞こえてきたと同時に、ベジットさんが抱きついてきました。

「……なんだ、ゴテンクスにゴジータじゃねえか。どうしたんだよ」
「名無しおじさんと遊ぶために来たんだぜー」
「駄目だ駄目だ。名無しは俺と遊ぶんだよ」

……遊ぶって絶対別の意味での遊ぶ、ですよね。
なんか嫌な予感しかしませんよ。
すると察したのかゴジータさんは不機嫌そうな顔を浮かべました。

「……お前な。名無しは疲れてるんだぞ。休ませてやれ」
「無理。こいつ全然俺に構ってくれねえし」
「子供か」

僕がツッコもうとしていたことをゴジータさんが代わりに言ってくれました。
ベジットさんはすぐ不機嫌になるので対応に困ります……。

「……ねえ、名無しおじさーん」
「あ、う、うん。ごめんね。とりあえず外行こう」
「おい無視すんなよ名無し」

ゴテンクスくんの腕を引き、逃げようとしていた僕にベジットさんは鋭い口調で声をかけてきました。
しかしそんなベジットさんから僕たちを守るようにしてゴジータさんが立ち塞がりました。

「お前それでも名無しの旦那か。名無し、行け」
「ご……ゴジータさん……」

僕は申し訳ない気持ちになりながら、ゴテンクスくんの腕を引いて走りだしました。







それから夕方くらいまで、僕らは遊んでいました。
そして今更僕は昼食を作っていたのを思いだしました。多分もう焦げて得体の知れないものになっているに違いありません。
途中ゴジータさんが来たので、三人で遊びました。そして二人と別れると、慌てて家に帰りました。




「……ただいま……」

恐る恐る玄関のドアを開けてみましたが、驚くほど静かです。何だか不気味……。

「……ベジットさん?」

返事がない……。
部屋で寝てるのかな。そう思った時でした。

「うわっ!」

突然後ろから背中を押され、床に倒れたかと思えば何かが僕の上に乗り掛かって来たのです。

「え……べ、ベジットさん……?」
「お前さっきはよくも俺を差し置いて遊びにいきやがったな」
「そ、それは……」
「……信じてくれねえかもしれないけどよ」
「……?」

真っ暗な部屋の中、ベジットさんの声だけが聞こえてきました。僕らはお互いにどんな顔をしているのか分かりません。

「……お前のこととなると、ガキっぽくなるのは自分でも分かってるんだ」
「……ベジットさん」
「……これでも、心配してるんだぜ。でも……何か……素直になれないんだよ」
「……」
「……悪かったな」
「……いいですよ」

そう言った直後口に何か柔らかいものが塞がりました。
僕はすぐにキスされたんだとわかりました。

「……今日はこれで我慢してやる。早く休めよ」
「……はい。ありがとうございます」

……来週こそ、沢山相手をしてあげよう。

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