短編

□違うんだよ
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人見知りだった僕は、こんなことじゃ強くなれないと思い、
どんな人とでも普通に接していこうと決意をした。
そうすれば、きっとみんなとお互いに仲良くなれてわかりあえるはずなのだから。
そして僕は、ターレスという同じ下級戦士の人と仲良くなった。
小さい頃は王子とばかり話していたから彼のことは知らなかった。
ターレスとは、暇なときよく一緒に話している。話し相手になってくれるし、
彼の話は聞いていると面白い。彼も僕を嫌ってはないみたいだ。

「ターレスって、将来何をするの?」

ターレスははん、と鼻で笑った。
彼は常に堂々としていて何だか余裕そうだ。…ちょっと王子と似てるかも。

「そりゃきまってんだろ、俺の力で全てをひざまっ、ひ、ひざまじゅかっ」
「???」
「……ひざまずかせるんだ!」
「…む、むずかしい言葉だね」

噛んだせいかちょっと涙目だ。
………というかひざまずかせるって…なに?

「名無しも何かあるだろ?夢」
「うん。…行方不明の家族を探すことかな」
「ふーん、家族思いなんだな」
「うん。王子にも、家族を守りたいなら強くなれって言ってた」
「へー、てっきりスキにしろ、とか言うのかと思ったぜ」
「はは、そうだよね」

ターレスはちょっと乱暴だけど、
話しているととっても楽しい。まるで僕の兄さんみたいだ。何でも話せるし。

「…ぷっ」
「あ?何笑ってんだよ」
「ごめん、何だかこうやって楽しく話したこと、家族以外にいなくって」

ターレスはちょっと嬉しそうだった。口元は変わらないけど目は笑っている。

「ふーん、あ、そういえばよ、お前昔苛められてたよな、お前よりもちっちぇガキどもに」

うう、なんて恥ずかしいんだ。

「…もしかして見てたの?」
「はっ、勿論見てたさ。でも助けなかったぜ。情けねえって思っただけさ」
「……下級戦士だから仕方ないよ」
「それなら俺だって一緒さ。でも、下級戦士だからなんだよ。堂々としてりゃいいじゃねえか。
メソメソウジウジやってたらそりゃ更にバカにされて苛められるぞ」
「…そうだよね」
「でもま、変わったんだろお前。それならいいさ」
「うん、たぶん変わった」
「ちょっとバカにされてもムキになるな。どっかの王子様はそういうのできねえけどな」

…確かに。昔マントを引っ張ったことがあるけど、それだけで怒ってたな。
顔を真っ赤にして、まさに何しやがる、とか言いそうな顔で。

「うん、確かに短気だよね」
「だろ?お坊っちゃまは困るよなあ、あんな性格でよ。嫌になるぜ」
「あ、ターレスも嫌ってるんだ」
「まーな。あいつはどう接すればいいのか分からん」
「え、普通に接すればいいよ」
「そりゃお前にしか出来んだろ。幼馴染みなんだろ、お前ら」
「え?どうして分かるの?」
「噂で聞いた」

誰だよそんな得も損もしないどうでもいい噂を流したやつは…
まさか王子?いや、そんなことを言う人ではないな…

「ま、関わる時は怒らせないよう気を付けることだな」
「俺は何回も怒らせてるけど…」
「ハハハッ、それもお前だからいいんだよ。分かれよな」
「…ええっ?なんで?」
「王子様の態度を見てみな。お前と別の奴では違うんだよ。何もかもがな」

な、何もかもが違う…?
変わらないと思うんだけど…。だっていつも怒ってばかりじゃないか。
別に俺には優しくないしめちゃくちゃ話しかけてくるわけでもない。…何が違うんだ?

「よくわからないよ」
「今は分からなくていい。今はな…」

何で二回言った。

「ターレス!」
「ハハハ、じゃあな!そんくらい分かれ!どーしても分からないならいっそ王子に聞いちまえ」
「は、はあ〜!?」

なんだよもう、逃げやがった。
…でも、ちょっと気になるなあ…。

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