短編

□Now working
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「うぐぐぐ……」

唸り声とペンを滑らせる音。名無しはどうやら書類を書いている様子。
広いテーブルに分厚い本と大量に積み重なれた書類…。
これを一日で終わらせなければならない。
名無しにとっては死ねと言われているようなもので、正直もう色々限界だった。

「まーだこんなにあるのか…」

積み重なれた書類を見ると、
あと何時間かかるのかと思ってしまい余計やる気がなくなる。

(どうしてこんなことになるんだ…)

泣きたい気分だが泣き顔を見られて笑われるのは勘弁してほしい。

(しかもなんで誰も来ないの!?)

名無しが居る場所は図書室のようなものであった。
普段は結構人で埋まっているのだが、今日はなぜか一人もこない。
それが名無しの元気をなくす。

「もうやだ…」

と呟いた時。

「おい」
「ウワアッ!!!」

突然ラディッツが現れた。

「な、なな、何で此処に!?」
「読みたい本があるんだよ、悪いか」「ううん、むしろ嬉しい」
「…で?お前はまた仕事を引き受けた訳?」
「う…」
「そうやって引き受けて、疲れて後悔して、後でどうしようとか言って困るんだろうが」
「だって。困ってたんだよ」
「お前は自分のことをもう少し考えろ。
周りの奴等のことばっかり気にしてたり、優先したりするな」

ラディッツは呆れたように溜め息をつく。そして腕組みをした。

「気づかないうちに、お前の身体はボロボロになってきてるんだぜ」
「…そういえば、最近、身体が重い…」

名無しは眠くなってきたことにも気付き、ラディッツの言葉に納得した。

「だろ?いい加減ゆっくり休んだらどうだ」
「うん。明日からそうする」
「…さてと」

ラディッツが名無しの隣の席に座った。

「え、何?」
「このままだったら睡眠不足で倒れるぞ。手伝ってやるよ」
「え、いいよ!ラディッツは元々、本を読みにきたわけだし」
「……おい、もう忘れたのか?」
「あ…ごめん」
「少しは他人に甘えてみろよ。遠慮なく」
「ええと…じゃあ…お願いします!」
「…ん」

ラディッツに手伝ってもらうことになり、やはり人数が増えたからかスムーズに進んだ。
*
「はあ…あともう少し…。ラディッツ、ありがとう」
「もうそれ聞き飽きた」
「あ。ごめん」
「それももう何回も聞いた」
「………すいません」

ずっとペンを滑らせているから、段々とスピードが落ちてくる。
だがあまり手を休ませる時間はない。

「ふわあああ…」

ほぼ一日中書類を書いている名無しには睡眠が必要だった。
ラディッツと一緒に仕事をしている間にも、何度もあくびが出た。

「大丈夫か?」
「うん…あともう少しだから大丈夫」
「…これ終わったらすぐ寝ろ。書類は代わりに渡しておくから」
「それくらい、俺がやるよ」
「お前、渡しにいく途中で寝そうだから」
「なっ!失礼な。立ちながら寝る人がいるかっ!」
「ここに居るじゃないか。ハハハハッ!」

笑い出すラディッツに、名無しは顔を赤くした。

「うるさい!ラディッツの馬鹿野郎」
「なんだと?じゃあもう手伝ってやらん」
「わあああ!待って、ごめんなさい!」
「……ぷっ、冗談だっつの」
「うっ!…ああもう!」

結局、書き終わった後すぐに、名無しは眠ってしまいましたとさ。

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