ショートショート

コネタです。
◆リボン 

今日から雑誌の撮影で海外へ。
成田空港の搭乗ロビーで待っている間に、岩橋がリュックから何かを取り出す。
「そうだ。うちのお母さんが昨日いっぱい作ったから持っていけって」
「なになに?」
平野がリュックを覗き込む。
「チョコだって。一人一個ずつあるから」
平野、岸、神宮寺の順に、小さな紙袋を渡していく岩橋。
「そうか!今日バレンタインか。腹減ってるから今食べていい?」
返事を聞かずに岸が袋を開ける。
「一気に食べると鼻血でるよ、岸くん」
「うわ、なんかすげー綺麗なチョコだな。あ、これうまい!」
平野と神宮寺もその声につられて袋を開ける。
「生チョコだね」
「ほんとだ、うまい!」

「あれ、なんかジンさんのチョコだけ形ガタガタしてんね」
岸の発言に、「そう?」と神宮寺。
「もしかして失敗作じゃねーの?」
あはは、と笑う岸の背中を思いっきり叩く岩橋。
「いって!!なんだよ」
「失敗作じゃないから!!」
「え、なんでイワゲンが怒んの?」
「岸くん失礼なんだよ!!」
立ち上がってプンプンしたまま、どこかへ歩き出す岩橋を、神宮寺が追いかける。
「玄樹美味しかったよ、大丈夫」と話しかける神宮寺の声が聞こえてきた。

「なんで?俺そんなひどいこと言った?」
はてなマークが頭の上を飛んでいる岸。
「岸くんさー、今のはさすがに俺でもわかったよ」と平野がしたり顔で頷く。
「なにが?」
「神宮寺の袋だけ目印ついてるじゃん」
神宮寺が座っていた場所に置かれたままの紙袋には、黄色いリボン。岸と平野の袋には何もついていなくて。
「…ほんとだ」
「神宮寺のやつだけ、作った人が違うんじゃん?」
「あー!ごめんイワゲン!!」
俺ってやつはー!と空港ロビーに岸くんの悲しい叫びが響いたのでした。

ハッピーバレンタイン♡

2017/02/14(Tue) 23:08 

◆シンデレラ【前編】 

しくしくしく。
今日も森の奥の小さなお家から、悲しそうな泣き声が聞こえます。

「どうして僕だけ舞踏会に行けないの?安田お母様も、美勇人お姉様も萩谷お姉様も、お城の舞踏会に行ってるのに〜」
泣いていたのは、いわはシンデレラ。
お父様が再婚してできた、継母安田さんは二人の姉たちを溺愛。今夜は皆で着飾って、お城の舞踏会に出かけています。
目的はもちろん、ここジャニーズ国の神宮寺王子に見初められること。

「いわはシンデレラ、あなたはこの部屋を全部掃除しておくのよ!いい?私たちが舞踏会から帰ってきたときにピカピカになっているようにね!」と滑舌バッチリな安田お母様。
「そうよ!虫とか絶対に出てこないように掃除して!」と叫ぶ美勇人お姉様。
「あなた個人には何の恨みもないけど、物語的に仕方ないみたいだから頑張って」と変わったアドバイスをする萩谷お姉様。

そんなこんなで、いわはシンデレラはいつものボロボロの服のまま、若干キレぎみで泣きながら掃除をしていたのでした。
するとそこへ、どこからともなく「いわはシンデレラ、もう泣かないで大丈夫っす」と声が聞こえてきました。
「あなた誰?」
「あ、魔法使いの岸っす」
現れたのは魔法使いのお兄さん。魔法でいわはシンデレラを綺麗に着飾って、お城に連れて行ってくれるといいます。
「やった!僕もともと可愛いから、もっと可愛くなれるね!」
「え。まあ…そうっすね」
予想と少し違う反応に戸惑いながらも、魔法使いの岸くんはいわはシンデレラを美しいドレス姿に変え、かぼちゃを見事な馬つきの馬車に変えました。
「ねぇ、誰が馬車を運転するの?」
「そっか。やべ、なんだっけ…」
従者に変身するのはネズミなのですが、それが思い出せない魔法使いの岸くん。
「じゃあ岸くんやれば?」
「え、俺?」
「早く!舞踏会終わっちゃうよ!」
「わかったよ、やるよ」
何故か自分に魔法をかけて、従者に変身すると、岸くんは馬車にいわはシンデレラを乗せ、お城へと向かうのでした。

2017/02/02(Thu) 15:43 

◆北風 

「うっわ、さみー!」
凍えるような向かい風に、岸が思わず肩をすくめる。

舞台公演を終えてから、雑誌の撮影で夜の丸の内へ。
おしゃれなスーツは大人の雰囲気だけど、薄手でとにかく寒い。
上にベンチコートを羽織っても、思わず震える三人なのだった。

「さむい!俺死ぬかも…」
歯をガタガタさせながら、岩橋が言う。
「いやいや、これぐらい大丈夫っしょ」と神宮寺が笑った。
「ていうかイワゲン、さっきから何で神宮寺の後ろにいんの?」
「は?べつにたまたまだし」
そう言いながらも、ジリジリと神宮寺の背中にくっつく岩橋。

「俺を風よけにしてるんだよな」
背中にくっつく岩橋の顔を、振り向いて見つめる。
「違うって。たまたまだし!」
「わかったわかった、いいよそれで」と神宮寺はまた笑った。

「…神宮寺の彼女になる子は幸せだろうなー」
岸が呟くと、
「その例え、もういらないから!」
と何故か怒る岩橋さん。
「神宮寺が俺を守るのは普通のことだから!」

岩橋に夢を見てる女の子たちには言えないけど…神宮寺に対してだけはジャイアンみたいだな、と心の中で呟いた岸なのでした。

2017/01/29(Sun) 21:52 

◆楽屋にて 

「2分20秒と、5秒」
岸が呟く。
目の前には神宮寺と岩橋の二人。

「え、なに?」
岩橋が岸に聞き返す。
「2分20秒と、5秒だよ。お前らの会話」
楽屋にあった時計を指差し、岸が説明する。
「神宮寺が2分20秒しゃべって、イワゲンがしゃべったの5秒」
「まじで?俺そんなしゃべってた?」
「いやいや、問題そっちじゃないっしょ」
「今は俺が話したいことあったからね」
「うわ、神宮寺優しすぎだろ」
「なんか岸くんの言い方だと俺が神宮寺に冷たくしてるみたいに聞こえるじゃん!いつもは俺もめっちゃしゃべってるのに!」
「いつもは玄樹が10分で、俺が50回だよな」
「50回?」
岸が聞き返す。
「そう、50回ぐらい頷いてる」
「…なるほど」
勉強になります、と呟く岸くんなのでした。

2017/01/18(Wed) 19:48 

←前の10件
[TOPへ]
[カスタマイズ]



©フォレストページ