夜に踊る姫

□第2話 夢か現か
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「アレ……」


 目が覚めると、ベッドの上で転がっていた。
 ちゃんと、布団も被って。


 ……記憶がない。


 昨日は……確かオビが私の部屋に乱入していて、話している途中で倒れたんだっけ?
 何で倒れたのかしら?


「まさか……ね……」


 思いついた考えを、頭を振って払拭する。
 ありえない……『アレ』が暴走しただなんて……。


 そう、確かに昨日は『薬』が切れていて、『アレ』が暴走しやすい状況ではあったけれど、『理性』が簡単に切れる状況でも……ああ、やめよう!


 うだうだ考えたって、何にもわからないわ!


 服を新しいものに着替えなおして、長い髪をひとつにまとめる。
 机上にはメモ。


『##NAME1##お嬢さんへ。
 急に目の前で倒れるから驚きましたよ。
 勝手に寝かしつけましたけど、許してくださいね。
 傷とか残っていても、自己責任でよろしくお願いしますよ』


 傷って……何をしたのよ!?
 ああ、考えるのも馬鹿馬鹿しいわ。
 どうせ、冗談ね。


「そういえば、彼は敵なのかしら……?」


 いまいちわからなかったし……注意することに越したことわないわね。


「ティア、いるか……?」

「ゼン……様」

「なんだ、その取ってつけた敬称は」

「ああ、ごめん。どうも、調子が良くなくって。どうなさいましたか、ゼン王子?」

「もういい、ゼンで。ティア、お前、隠し事してないか?」

「何よ、いきなりね、ゼン」

「いや……」


 ゼンは考え込むそぶりを見せる。


「1年前のことだ。夢か現か、背中に黒い羽を生やした少女を見たことがあった。その雰囲気がティアにそっくりなんだ」

「何で、そんな話を今するのよ」

「嫌な予感がしたんだ」


 嫌な予感……ね。


「夢か現か。それならば夢の方が可能性は高いわよ? それに、隠し事なんて、ふふっ。ゼンに見破れるのかしら?」

「なっ」

「だってそうでしょう? ゼンはそういうことに弱いのよ」

「悪かったな。それで、隠し事をしているのか?」

「さぁ? 当てて御覧なさいませ?」
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