夜に踊る姫
□第2話 夢か現か
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「……してる!」
「ならば、しているのでしょう」
「……してないのか」
「していないのでしょうね。ところで、ゼン。わざわざこんな早朝からこられたって、迷惑です。それに、執務は?」
「いっけねー」
「忘れていたんですか。私もただいまより。報告書をまとめるので、出て行ってくださると嬉しいです」
「はいはい、わかったよ。俺の方が主なのに」
「この部屋の主は私です」
バチバチっと、視線が交差する。
ゼンがため息を吐いて帰っていった。
「……隠し事。それは得意分野ではあるけれど、明かすわけないでしょう」
そういうところが、ゼンの甘ちゃんなところ。
とはいえ、ゼンのほうが年上なんだけど……表向きは。
私が、16だからね。
まあ、よく大人びているって言われるんだけど。
当たり前だよね。
実年齢は私のほうが上なんだもん。
少し、わけがわからない説明かな?
簡単にまとめると、私は城では16の振りしているけれど、実際はもっと上……ゼンよりも年上ってこと。
この演技力もあって、ただ大人びているとしか見られないのよ〜。
まるで、自画自賛するナルシストになってきたし、そろそろやめるとして。
「報告書……かなり溜まってるからなぁ」
机上にペンと、紙を用意する。
慣れた手つきといわれるような素早さでどんどん文をまとめて書いていく。
「あ……いけない、白雪の警護」
報告書の半分の処理をしたところで、思い出す。
すっかり、朝日も昇っている。
今頃、城門だろう。
早く行かなければ。
──机上にむなしく残された報告書。
『──報告書──
この一年でわかったことは……』
──片方は、コレまでの視察の報告。
『──報告書──
第二王子について。
未だ、甘いところが多く利用するには不十分。
しかし、懐柔と言う意味では簡単にいく可能性あり。
なんていったら、お怒りになられますでしょうか?』
──もう片方は……誰かへの密告。
──それは、二枚用意されていた。
──合計三枚の報告書はむなしく、机上に広げられたまま放置された。