Short story

□無垢な熱を伝えて
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*無垢な熱を伝えて*




ふと目が覚めた。
目を開けた先には彼の顔。
今日は彼の家は彼以外誰もいない為、泊まりに来たのだ。
互いにあまり積極的では無いからか、こういうきっかけというものがないと、会ったり出来ないのだ。
だから、私はわりとドキドキしているし、彼も少なからずドキドキしているのではないだろうか。いつもより動きが鈍かったりするところがある。
いつもはあまりくっつく事が出来ない分、私は彼にくっついて眠っていた。彼はそんな私の腰を抱いて眠っていた。
時々不安になる。
彼が私のことが好きなのかどうか。互いに積極的ではないからこそ、余計に。
彼の寝顔を見ると、やっぱり綺麗だと思う。それに、好きだとも。
「側に居て、」
ぽつりと小さな声で呟く。
「ずっと隣に居たいな、」
またぽつりと呟く。
「すき、」
ぽつりと呟く。
すると驚いたことに彼は私のことを抱き締めた。
てっきり眠っているのだと思っていたのだけど、眠ってはいなかったようだ。
「若君、起きていたんだ?」
「なんとなく青山が起きているような気がしたからな。」
「そっか。」
彼に抱き締められる。それは凄く心地好いもので、私は目を閉じた。
すると、頭を優しく撫でられ、額にキスを落とされた。
涙が出そうになる。
彼は私のことを好いていてくれてる、と思うことが出来る。
「俺の隣にいてくれないか、側にずっと。俺は積極的ではないから、青山を困らせる事が多いかもしれない。けど、隣に居て欲しい。」
一つ一つがすっと胸に落ちていく。
暖かいものでくるまれたように。
彼に抱き付けば抱き締められ、キスをされる。
安堵し、体の全ての力が抜けていく。
「すき、」





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