TOA 1
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宮殿へ暗い顔をして帰ってきたアスランは報告をしに、ピオニーを探した。
いつも見つける事に苦労するが、こんな日に限ってすぐに見つかるのだ。
「なんだ、アスラン。浮かない顔して……俺に会いたくなかったって表情だな?」
「そんなことはございません」
「ふっ、無理すんな。
じゃあ俺の部屋で報告を聞く」
アスランはそんな顔をしていたのかと、自分の頬を擦った。
執務室で短く報告を聞くとピオニーは椅子の背もたれに預けていた上半身を勢いよく起こした。
「修道院に居たのか!?
何でまたそんなとこに。
俺はてっきり教団には怨みがあるのかと思っていたがな。だってそもそもは預言のせいだろ?」
「怨みがあるようには見えませんでした。むしろ教団の者を庇っているようでしたし」
ピオニーは、自嘲するように小さく笑った。
「……そうか俺とは違うか。
どう考えたら自分一人の責任になるんだろうな。俺には到底できない」
「陛下とはまた事情が違いますから、卑下なさらないでください」
「そうか……?」
腑に落ちないピオニーは顔をしかめるが、アスランは見なかったふりをして話を進めた。
「で、私見なのですが口止めさえすればエドガーにも見つからないでしょうし。このまま修道院にいることに目を瞑りませんか?
スザンヌさんも安心されると思いますよ」
「そうだな」
短剣の事は伏せて報告を終えたアスランは内心安堵した。
「あと三日ほどで式だ。
来てほしい手紙は無いのに式の招待状は届きやがったぞ」
机の上にあった白い封筒を目の前でひらひらとさせた。
「ジェイドから例の軍用鳩も来ないか?」
「申し訳ありません、あの術は私の専門外でして。近距離なら受け取り可能ですが、遠方となると難しいですね。
出す方も受けとる方も大変難しい譜術です。
主に大佐と副官のマルコ、あと一人……サラ中尉が主に使ってますね。あとは将校の方々だとか」
「あぁ、あの美人の!サラ・レーニー中尉」
「……えぇ、美人ですね。私は苦労人のイメージが大きいですが」
「?」
「確かマルコと同期で士官学校を卒業して、実力はどちらも五分で期待されてましたがマルコと差がつきましたね」
「何故だ?……女性だからか?」
「中尉が初め第五師団にいて全く力を発揮できず、退役するところをカーティス大佐が拾った形でしたからね。
それからはめきめきと成長し続けています」
ピオニーはニヤニヤと表情を変えた。
「なんだよそれ、ジェイド惚れられちゃうじゃねぇか」
アスランはそんな話に苦笑いをし、すかさず話を本題に戻した。
「で、そんなサラ中尉はメイジャー邸でメイドに成り済まし捜査を行ってくれています」
「メイドだと!?けしからんな、見てみたいじゃねぇか」
「……陛下真面目に聞いてます?
ユナさんが無事見つかったからと言っても危機的状況には変わりないんですよ!」
「わかってるよ、でもとりあえず一安心だ。ユナがエドガーのところにいないならな。
ジェイドかサラの報告を待つのみ!俺はあいつらを信じる事にした」
そう言って何かニヤつくピオニーだった。
すっかりいつもの調子に戻ったとアスランはため息をつきながらも少し安堵した。