TOA 2
□4
1ページ/7ページ
『カーティス家のお給仕は如何ですか。ユナのことだから上手くやっているのでしょうね。
私の方は失敗ばかり。何故こんな私を
雇ってくださったのかわからなくって、自信喪失……毎日悶々としてます。
貴女の手紙をいつも励みに、心待ちしています。 フローラより』
採用試験で友人になったフローラから来た手紙を自室で開封し、小さな声で読み上げた。
同じ夢を抱いて共に挑んだ試験。
自分は落ちたが彼女は合格し、今は憧れの宮殿でメイドをしている。
しかしいつも来る手紙には失敗や自分を卑下する内容のものばかりで、ユナは心配になりいつも励ましていた。
「えーと、どうお返事しようかな……」
カーティス家に来て約1週間。
ジェイドは忙しくて毎日いるわけじゃないけどフィリップに教えてもらうことで着実にステップアップしていると手応えを感じていた。
「でもジェイドさんが帰ってくると空回りして失敗ばかりしちゃうんだよね。
嬉しさのあまりついつい喋りすぎちゃうし、余計なお世話しちゃうし……
フローラは陛下といつも一緒だから寂しさを感じたり会えた時の嬉しさは感じないのかな?」
手紙を書くために自分の行動を振り替えってみると、やはり失敗も多いことに気づいた。
フィリップと練習している時はできるが、いざジェイド本人の前でやるとなかなかできない。
そんな思いを赤裸々に書き綴り、完成した手紙を持って屋敷を出た。
「フィリップさん、行ってきます!」
「はい、今度こそゆっくり過ごして来てくださいね」
「はい」
ジェイドから再びお休みをもらい、今度こそ孤児院に帰るのだ。
初めてのお給料はジェイドへのプレゼントに殆ど使ってしまった為、お土産はゲイリーの焼いたクッキーと薔薇の花束を持って。
孤児院までの道程を歩きながら、ジェイドに万年筆を渡した昨日の事をふと思い出す。
────「……せっかくのお給料です、自分の事に使えばいいものを」
「自分のためです!……だってジェイドさんの喜んでくれる顔が見たかったんですから」
喜ぶどころかため息まじりにそう言われたので、つい自分の本音が出てしまった。
(私なんかが万年筆を渡すなんて、
失礼な意味に取られないといいけど……)
ジェイドは眼鏡のブリッジをあげるとユナの頭を少々乱暴気味に撫でた。
(……照れてる、のかな?)
そう気づき、嬉しそうに顔をあげてジェイドの表情を見る。
「ありがとうございます。
ユナにいつも見守られていると思いながら使わせていただきますよ」
「……は、はい!」
回想をそこで中断せざるを得なくなったのは、顔から火が出そうなくらい火照ってしまったからだ。
ジェイドのその時の表情が胸をじりじりと焦がすようだ。
「……はぁ」
あんな表情が見れたので、たくさん悩んで決めた甲斐があったと、甘いため息をつきながらにやけてしまう頬を両手で挟んだ。