HOWL BE QUIET

□竹縄航太
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きた。直感でそう思った。
アンプと楽器だけの部屋に残る余韻。それは4人を感動させるには充分だった。
「これ……」
橋本がぽつりと呟く。
その声に呼応したように竹縄はピアノから顔を上げた。
「出来た。完璧」
岩野がドラムスティックを置く。軽く音が鳴り、合わせてメンバーが次々と笑顔になる。
「「「「よっしゃあ!」」」」
四人で顔を見合わせて声を出す。まるで高校の学園祭の打ち上げの様なテンションで4人は跳ね回る。
そうしているうちに、竹縄の中で押し殺していた感情が一気に溢れ出してきた。
その気持ちに気づいたのだろうか、黒木はちょっと、とメンバーに声をかける。
「じゃあ、今日はもう帰ろ」
「え、ご飯食べたくないの黒」
はっしーが不審に思うのもわからなくはない、でも気づいてやれよ。
そんな心の中での声は出さずに、んー、と悩んだ声を出す黒木に、岩野も察したのだろう、橋本を宥める側にまわる。
「いや、明日も朝早く集まらないといけないし、タカシさんに連絡も入れないといけないし」
そうかー。寂しそうにする橋本に心を痛めたのか、岩野はでも、と続ける。
「とーるちゃんははっしーと飯に行く時間あるよ」
その言葉に目をきらきらと輝かせて頷く橋本。岩野を横目で確認した竹縄は彼に手刀を切る。
「じゃあ俺はタカシさんに連絡いれとくわ。竹は先に帰りな」
……ああ、なんて素敵なメンバーなんだろう。
「ごめんな、ありがとう」
じゃあまた明日。いそいそと準備をして出ていく竹縄を、黒木と岩野は微笑んで見送った。
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