HOWL BE QUIET

□竹縄航太
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頭が重い。……そうか、昨日沢山飲んだからかな。
ベッドに柔らかい光が当たり、暖かい。
竹縄はベッドに座り直し、時計を確認する。8時だった。
――そういえば甘くていい匂いがする。
竹縄は不思議に思い寝室のドアを開けると、望愛が椅子に座って携帯をいじっていた。
ドアの開く音で竹縄に気がついた彼女は早く食べよう、と言わんばかりに椅子に視線を移す。
竹縄は促された通り椅子に座る。望愛はいただきます、と自分で作ったフレンチトーストを食べ始めた。
「勝手に食材使ってごめんね」
竹縄が食べ始めると同時に望愛は言う。
「いいよ、むしろありがとう」
「竹ちゃんは甘いものが好きだからフレンチトーストがいいかな、って」
伏せ目がちに言う望愛がとても愛しく思い、竹縄は頭を軽く撫でた。
彼女は照れながらフレンチトーストを食べる。
「服とか少し移動させておいて正解」
望愛がコーヒーカップに手を伸ばしながら言う。
「ここから仕事行けるし。シャワー使わせてもらっちゃった」
「俺酔って先に寝ちゃったからなんにも覚えてないわ」
「そうだよね、大変だったんだよ。はっしーと黒ちゃんに手伝ってもらって」
ふと出た単語に竹縄は驚く。
「もうはっしーとか呼んでるんだ」
望愛は少し得意げになって言う。
「あたしはファンだしさ、それくらい普通だよ。本人にも許可もらえたよ」
なるほど。頷いた竹縄は自分もそう呼ばれていると納得した。
望愛がふと時計を見ると9時。食べ終えたお皿を下げ、コーヒーを飲み干すとまた竹縄を向かい合って座る。
「何時に家出るの?」
「9時半。竹ちゃんは今日何時?」
竹縄も食べ終えたお皿を下げる。
「今日はオフの日。帰りここ来れば?」
えー。と渋る望愛へ竹縄はさらに言う。
「会える日に会っとかないと。遠征するライブとか会えなくなるし」
少し考える様な表情をした後、望愛は頷いて言った。
「わかった。今日はこっちに帰るね。でも家に居る時教えて、独りで待ってたら帰らない予定だった。とか嫌だからね」
了解、と竹縄は頷いた。
「じゃあそろそろ行きます」
望愛が玄関に行くと竹縄も一緒に玄関まで行った。
「いってらっしゃい」
竹縄は笑顔で望愛を送り出した。
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