HOWL BE QUIET

□黒木健志
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どんな仕草も全部狙った物だ。女性は皆そう。
性格も、仕草も、表情もなにもかも作り偽る。
そして騙して去っていく。もう嫌だった。騙されるのも、騙されるのを見るのも。

「お前またなの」
黒髪の男――黒木健志は声に刺を含ませながら隣の白銀髪の男――竹縄航太に言った。
オセロの様な二人。髪や服装だけでない。ピュアですぐ信じてしまう竹縄と、全て疑う偏見だらけの黒木。もちろん女性の話である。
「何回も失敗してるんだから大丈夫だよ」
自分で言うほど危ないものはない、とわかっている黒木はため息をつく。いや、わかっているつもり、である。
黒木には妹が居る。兄に似て華奢でスタイルが良く、美人。運動もそれなりであり、成績も優秀。
兄からしたら誇らしい妹なのだが、一つ大きな難点があった。
男癖が酷いのだ。手当り次第付き合って、騙してさようなら。それさえ無ければ完璧な妹なのに。
そういう狙いだらけの女性に騙される竹縄を見るのも黒木には酷だった。
彼はもう一度ため息をついてから口を開いた。
「……明日の対バンの話をしよう」
対バン相手はStraight Lineという同期バンド。橋本佳紀が仲良くしていたバンドで、呼ばれたので対バンすることになったのである。
「はっしーが言うには凄く演奏の上手いバンドみたいだよ。5人組なんだって」
楽しみだね、と黒木が返すと、竹縄も笑顔で頷いた。
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