青き月の光よー1
□セーラームーンの誕生
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「セーラーV大活躍、20億円のダイヤぶじに、か」
朝の7時。私は、新聞を見ながら、朝食とっている。一面を飾るニュースに釘付けだ。
「ねえ、ライラプス。最近宝石強盗、詳しく言えば透き通った白の宝石を狙う輩が増えたと思うけどこれって……」
私は、記事から目が離せないまま、愛犬のライラプスに話しかける。
狼のように毛が立っていて大型犬だけど、ただの犬ではない。
「ああ。実月の思うとおり、敵にあれを狙われている。
今は、セーラーVが潰してくれているが、いずれお前の力も必要なるだろうな」
ライラプスは喋る犬なのだ。
それに、毛を触れれば分かるが、埋もれる毛の中には三日月形の禿とも言えるような印がある。
「だよね…。じゃあ、私そろそろ学校に行くから、留守番よろしく」
「ああ、気をつけろよ」
私は、ランドセルを背負って、区立十番小学校へ足を運んだ。
転生した私は、色々恵まれすぎた才女として、同級生の皆から敬遠されている。
今日も、ボーっとするだけの学校生活を過ごして、十番商店街を通って下校する。
途中で、中学生の女子たちとぶつかりそうになる。
慌ててよけた所で、足を挫けた。
転ぶ……!
目を瞑った瞬間、誰かに肩を支えられる。
転生してから、親と兄以外1度も人の肌に触れてないのに、見ず知らずのその人の手はなぜか覚えがあった。
思わず顔を上げると、美丈夫と言うべきなのか。
体育会系の爽やかな男の子が私を支えてくれていた。
お互いしばらく見つめ合う。
男の子が我にかえると、慌てて私を立たせて、言う。
「お前、足大丈夫か?」
私は少し屈んで、足首を見る。
足首が真っ赤に腫れ上がっている。
男の子が苦痛そうに顔を歪めると、腫れた足の方に手を伸ばす。
やはり、初めて会った気がしなくて、そのままにされるがままでいると、
彼の手が私の足に触れた途端、力がみなぎってきた。
そして、一瞬のことで、彼の手が離れると、男の子は苦笑しながら言う。
「変なマネをしてごめんな。多分、これで足が動けるようになっから」
「あ、ありがとう」
確かに、足が楽になった。男の子は、爽やかな笑みを浮かべると、自己紹介する。
「俺、折口蒼衣。十番小の5年生。お前は?」
「月島実月。蒼衣君と同じ小学校の4年生なの」
「あ、もしかして、十番小の神童って呼ばれている奴?」
「ちょっと大げさすぎる気がするけど、そう言われて敬遠されているわ」
「確かに、ちょっと才色兼備なだけでそれは言いすぎだよな。
俺の同級生の間だと、未だに俺のことを前代の神童って、騒いでいやがるし。勉強、得意じゃないのによ」
嫌味を言ってるわけじゃないのが分かって、心地よかった。
「あ、いけねっ。俺、待ち合わせている人がいるんだ。じゃあ、また今度なっ!」
蒼衣君はそう言って軽やかに笑うと、走り去っていく。
まるで、夏を運んでくれる5月の風のようで。
私達は、この時既に恋に落ちていた。
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