青き月の光よー1

□セーラームーンの誕生
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蒼衣Side





待ち合わせをしている衛兄の所へ駆け寄りながらも、

さっき鉢合わせた女の子、実月ちゃんの事が頭から離れない。


神童と呼ばれてちやほやされて生意気な女の子かと思ったら、

控えめで冷静で、澄み渡った青い月の光を思い起こさせる不思議な奴だった。


実月ちゃんが腫れた足に耐えている時、俺は思わず力を使ってしまったけど、

彼女は、気味悪そうに見てないで、ただ純粋に驚くだけで。


その驚いた表情は、何かをリフレインさせていた。





まるで、初めて会ったはずなのに、初めてじゃないような。





走る時、心拍数が上がるって言うのは、衛兄から聞いたことあるが、

俺は、あまり疲れない体質のせいか、それを実感したことない。


それなのに、今はやけに息苦しく感じる。


なんでだ?


大きい店舗の宝石店の前に衛兄はいた。


いつも通り、タキシード姿で。


衛兄が俺に気付くと、つけていたサングラスを外し、笑ってくれる。


俺も笑って返す。


「衛兄、またわざわざその格好でうろついてたの?」


「ああ、蒼衣か。珍しいな。体育会系のお前が息を切らしてるし、いつもより遅いし、

何か変わった事でもあったのか?」


「うーん、ちょっとした人助け?

女子中学生とぶつかりそうになった女の子が避けた時、

挫いて転びそうになった所を助けたんだ。

すっげー綺麗な女の子でさ、クール・ビューティーって言うんだっけ?

性格も嫌味無しの冷静な子で……」


衛兄がクスリと笑った。そして、深い青の優しげな目で俺を見て言う。


「蒼衣…その子のことが気になるんだろ?」


俺の頬がカァーッと熱くなる。


「また会えるといいな」


「ああ!学年は違うけど同じ学校だし、会えるのが楽しみだ!」


「そうか」


衛兄が、俺の明るすぎるらしい回答に微笑んで、頭を撫でてくれる。


「ところでさ、今夜は目の前の店で探し物をするのか?今回も手伝うよ」


衛兄さんは夜な夜なある物を探しに、

怪盗ルパンよろしく扮装して宝石店に忍び寄っている。


俺も衛兄みたいに、タキシードは着こなせないけど、

バトラーの制服なら問題ないわけで、一緒に扮装して、探すのを手伝っている。


「ああ、いつも悪いな」


「平気だよ。俺の身内は、衛兄だけだし。衛兄の身に何かあったら、俺も後を追う」


「自分の身は大事にしろよ」


「分かってる」


俺が笑って答えると、衛兄は苦笑いして、

帰るか、と俺の頭を撫でる。


俺は頷いて、先を行く衛兄の後を追っていった。






蒼衣Side END
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