コイノヤマイ

□カルテ8
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 当直の翌日は夕方の5時までの勤務となっている。

 昨夜は患者の容体の急変やコールもなく、いつもより仮眠を取ることが出来たおかげで、メディカは当直明けの疲労感をさほど感じなかった。

 病院を出るとメディカはエアバイクに跨がり、着替えなどを取りに帰る為マンションへと向かっていた。

 夏の夕方の、まだ熱が残る街を走りながら、あの部屋の状態を思い出すと憂鬱になった。

 消火時に被害を受けた家電や雑貨類、本など……。その処分の事を考えると、家に帰るのが億劫になる。

 重い足取りで自分の部屋へと辿り着き、ドアを開け中に入ると、知らずホッとしている自分が居た。
酷い状態とは言え、やはり自分の家が一番落ち着く様だ。

「さてと……。取り敢えず、着替えと生活に必要な物だけでも持ち出さないとね」

 メディカは自分に言い聞かせる様に言うと、まだ異臭が漂う部屋を見回した。

 クローゼットからキャリーバッグを引っ張り出し、服や下着を詰め始める。この時、もう着なくなった物は処分することにして、それも同時に分けて行く。

 これは、新しい服を買ういい口実かもしれない。そう思うことにした。




「これで、よし!」

 と、立ち上がり部屋をゆっくり見回すと、目に入った本棚から数冊の医学書を通勤用の鞄へと押し込んだ。
マチのある大きい鞄は、ズシリと重さを増し変形したが、気にしてはいられない。

 メディカは部屋を出て鍵を掛けると、ドアの前で小さく

「また、来るから」

 と、呟き、マンションを後にしたのだった。
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