コイノヤマイ

□カルテ16
1ページ/7ページ

休日とはいえ、自分の家の様にダラダラしているわけにもいかず、メディカはベッドを抜け出した。

身支度を整え、リビングに向かって歩いていると、前からスーツ姿のトランクスが歩いて来るのが見え

「おはようございます。今日は早いんですね!」

立ち止り挨拶をすると

「お、おはようございます・・・!ええ、今日は工場の方に行くことになっていて・・・。いつもより早いんですよ。」

と、トランクスも立ち止り挨拶を返した。

気が読めるとは言え、常に気配を探っているわけではない。メディカが休みだということは知っていたが、まさか朝の挨拶を交わせるとは思わず、顔が緩みそうになる。

「そうなんですか。」と言って微笑んでいる姿を見つめ、口元がにやけそうなのを堪えていると、突然「あっ」と言う声と共にメディカが距離をグッと縮めると

「曲がってますよ。」

と、ネクタイを手に取り、小さく笑った。

そんなメディカの行動にトランクスの胸は跳ね上がった。

真下からする髪の香りに、全身がカッと熱くなる。

「はい!いいですよ。」

メディカは1歩下がると、水色地に青い斜めストライプの入ったネクタイを見つめ微笑んだ。

「あ、ありがとうございます・・・!あの・・・それじゃあ、行って来ます・・・!」

トランクスは眼鏡を上げる振りをして、赤く染まっているだろう顔を隠しながら、慌てて歩き出すのだった。

そんな、動揺するトランクスに気付くことなく、メディカは「行ってらっしゃい。」と、その背中に向かって小さく手を振るのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ