コイノヤマイ

□カルテ19
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勤務を終え、説明会が行われるビルに着いたのは説明会が始まって20分程過ぎた頃だった。

入室するなり怒気を含んだ声が上がり、予想していた通りの状況にメディカは苦笑いしながら空いている席へと着いた。

前には管理会社の担当者が2名座っており、ざわつく人々を宥めている。

(はぁ・・・。やっぱり、こうなるよね・・・。)

メディカは小さく溜息を吐くと、渡された書類に目を通し始めた。

退去に関しての説明や金銭に係わる内容が書かれたその書類に目を通しているうちに、怒りの声は除々に治まりだし、それを見計らったかの様に

「ええ・・・。皆様方には大変ご迷惑をおかけしております。私どもとしましても、今回の件に関しては十分な補償をさせて頂きたいと考えておりますので何とぞよろしく願い致します。」

年配の担当者が丁寧に頭を下げると、室内は落ち着きを取り戻し、ようやく説明会は始まったのだった。

居住者たちに言いたいことを一通り言わせ、落ち着くまで待つ。という、会社側の対応に、メディカは(心得てるなぁ・・・)とただ感心するのだった。



何とか住民の納得を得て、説明会は2時間程で終了した。

敷金の満額返金だけでなく、新たに建設されるマンションへ優先的に入居出来ることや、退去にかかる費用の補助、新たな住まいの提供など、その手厚い内容が住民たちを納得させた。

メディカも他の住民同様納得したのだが、会社から提供された物件には自分の望む物件は見つからず、ガクリと肩を落とすのであった。
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