コイノヤマイ

□それぞれの日常@
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デスクに積まれたファイルや書類に目を通しながらも、メディカのことが頭をよぎる。

仕事に集中しようとするも、余計にあの柔らかい表情や声を思い出してしまい、彼女のことで頭の中が一杯になってしまう。

隣りを歩く彼女から香る甘い香り、白く伸びた細い腕、そして柔らかそうな艶のあるあの唇・・・。

それらを思い出すと全身が熱を持ち、男の本能がムクムクと湧き上がってきた。

こんなふうに、1人頬を染めている自分を先日までの自分は想像出来ただろうか。

昨日、彼女に恋してしまったことを認めると、魔法にかけられた様に心は大きく弾み、モノクロだった世界が色付き始めた。

閉塞感に苛まれ、立ち止っていた自分を救ってくれたメディカを想うと心が震える。

落ち付かず、椅子から立ち上がると、西の都でも一番高いと言ってもいいこの部屋から都を眺めた。

そして見える、彼女がいる西の都の病院。

(ここからだと、飛んで行けばあっと言う間に着いちゃうな・・・。)

と思うと

(・・・ちょっと見に行くくらいなら大丈夫だよな。)

1人悪戯っぽく笑い、窓を開けようとしてその手をハタと止めた。

自分がストーカーまがいのコトをしようとしてることに気付くと恥ずかしくなり、慌てて椅子に座る。

背もたれに体を預けながら、彼女に執着し始めている自分に頬を染めつつ驚いてしまう。

思いもよらぬ恋の訪れに、目の前に積まれた仕事など全く気にならなくなる程心は浮かれ

(さ、早く片付けて、今日は早く帰るぞ!)

と、何時になく仕事への意欲が増すトランクスであった。
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