コイノヤマイ

□カルテ16
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トランクスはエアカーの後部座席で、ぐったりと項垂れ、大きく溜息を吐いた。

「社長。御気分が優れないようですが、大丈夫ですか?」

運転席からした、自分の身を案じる声に

「あぁ・・・何でもない。大丈夫だ・・・。」

と、言いつつも、また溜息を吐いてしまう自分がいる。

何時になく顔を顰めている若い社長の様子をルームミラー越しに見つつ、運転手は西の都郊外にある工場へとエアカーを走らせるのだった。

いつもとは違う、流れる景色をぼんやり眺めながら、家族全員が自分の片想いに気付いているという恥ずかしい状況に頭を抱えたくなる。

これから母と妹にどれだけからかわれるのだろうかと思うと、溜息しか出てこない。

(はぁ・・・。覚悟しておかなきゃな・・・。)

そう思うと同時に、きっと何も触れて来ないであろう父のことを思うと寒くなった。

ある意味、それはそれで厄介だ・・・。

眉間に深い皺を寄せ、苦い顔をしながらふと空を見る。白い雲が湧き出した真っ青な空からは、強さを増しつつある太陽の光が降り注いでいた。

その光にトランクスは目を細め、顔を逸らすと、空と同じ色の自身のネクタイが目に入った。

それに触ると、先程の事が思い出され口元が自然と緩む。

恋愛とは距離を置いていたのに、恋に落ちる時というのは一瞬なのだなと思うと、少し前までの自分が滑稽に思えた。

メディカの事を想うだけで、とても幸せな気持ちになれるのだ。
家族にどう思われようと構わない。
この気持ちを今は大切にしよう・・・。

そう覚悟を決めるトランクスであった。
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