コイノヤマイ

□カルテ16
7ページ/7ページ

工場の視察を終え本社に戻ると、時間は昼の2時を過ぎていた。

デスクの椅子に腰掛けると、早々に秘書が現れ、これからの予定を告げていく。

トランクスは苦い顔をして、それを聞きながら、どうしたら今日も早く帰宅出来るかを考えていた。

「・・・以上が、これからの予定となっております。」

タブレット型の手帳を読み終えた秘書に

「・・・あれ?夕方から食事会があったはずだけど・・・。」

トランクスは不思議そうな顔を秘書に向けると

「本日予定だった会は、会長が出席されるとのことで連絡を受けております。」

「えっ・・・母さ・・・会長が?!」

また新たな研究を始めたばかりの母が、研究室を空けるとは・・・。そんなに興味がありそうな会だっただろうか・・・。

トランクスが怪訝な顔をしていると

「それから、会長より伝言がありまして『春を満喫するように』とのことです。」

そう秘書が口にした瞬間、トランクスは一瞬にして顔を赤くするのだった。

意味が分からないであろう秘書は、珍しく動揺している社長を不思議そうに見つめている。

「そ、そうか・・・。分かった。ありがとう・・・。」

と、慌てて何とか平静を装うものの、熱をもった顔の赤みはなかなか引いてくれない。

「それでは、間もなく広報部長が来られますので・・・。」

秘書はチラリと自身の腕の時計に目を遣りそう告げると、軽く頭を下げ社長室を出て行くのだった。

秘書が部屋を出たのを確認すると

「はぁー・・・。母さん・・・。」

と、トランクスは未だ赤い顔で天を仰ぐのだった。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ