コイノヤマイ

□カルテ25
6ページ/6ページ

メディカはベッドに潜り込み目を閉じたが、胸の奥に仕舞いかけていたことを思い出し、再び目を開けた。

いつも穏やかなトランクスに突然手を掴まれたその瞬間、ドキッとしたのは、これも同じく久し振りに異性に触れられたからだろうか。

手を掴んだまま自分の前を歩くトランクスの背中を見つめながら、少しばかり心拍数が上がっている自分に気付き、思わず声を掛けて誤魔化した。

そして、慌てた様に手を離された時、少し寂しく感じたのは気のせいだろうか。

掴まれた手首に触れると、胸のあたりが締め付けられる様な感覚を覚え、それを否定する様に、ふっと小さく息を吐いた。

2人並んで縁台に座り、ぽつりぽつりと話しをしていたことを思い出す。その時間はとても穏やかで心地良かった。

それはきっと、トランクスの落ち着いた声や雰囲気のせいだろう。

端正な横顔は、自分の話しに頷いたり微笑んだりと、しっかりと反応を示してくれていた。

そんなトランクスの横顔を思い出していると、あることまで思い出し、メディカは眉を寄せた。

それは、かき氷をトランクスの口元に差し出したことだった。

自分が気にすることなくとったあの行動に、トランクスの戸惑っていたであろう、あの顔を思い出すと

(何してんだろ・・・私・・・。)

と、胸が苦くなった。

きっと彼は引いていたに違いない・・・。

自分のした事を後悔しながら、微妙な感情の変化に気付かぬふりをする様、メディカは目を閉じるのだった。





そして枕元に置いた携帯電話がけたたましく鳴ったのは、この数時間後のことである。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ