恋に唄えば2

□第三の男
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 邪悪な気の正体を調べるため、俺たちは手分けして、この城を調べることにした。

 俺は目の前にある謁見の間に入ると、そこにある石像を一つ一つ調べた。

 部屋の一番奥には、威厳のある男性の石像が、顔を歪め立っており、その隣りには老人の石像が立っている。

 他に兵士と思われる石像が数体並ぶ中に、少年の石像とそれを庇うように立つ女性の石像があった。

 女性は叫ぶように、少年は怯えたように真っ直ぐ前を見つめている。

 この石像を見た瞬間、俺は頭に微かに過ぎったことを確信した。

 この城にある石像は、ここで生きていた人々だ……!

「誰がこんなことを……!」

 目の前にある少年の像を悔しい思いで見つめていると、別の建物の方からパートナーの気が高まるのを感じた。

 どうやら、俺を呼んでいるらしい。

 俺は少年の像を一瞥してから、パートナーの気を感じる場所へと向かった。



 
 向かった先は、地下にある牢だった。

 地面を掘っただけの、壕のようなその場所は、暗くかび臭く、じっとりとした湿気が立ち込めている。

 この奥か……。

 人差し指に気を集め、それを照明代わりに進んでいくと、一箇所からぼんやりと灯りが漏れていた。

「何かありましたか?」

 そう言って、ついさっきパートナーが破っただろう牢の中に入ると、そこには初老の男と少女が倒れていた。

「! その人たちは?!」

 この城に生身の人間が居たことに驚いていると、倒れている少女から邪悪な気を感じた。

 この気……!

 この子が……?!

 警戒し身構えていると、時の界王神様の声が聞こえてきた。
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