Pioneering figure of the fairy tale:

□Long time no see you!
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ロンドン
キングクロス駅9と3/4番線プラットホーム


イリューシアたちオリアス一家は、スコットランドから電車を乗り継いでキングクロス駅まで来た。

え?魔女なのに普通の電車を使うのって?

この場合は魔力を無駄に使うより電車の方が、早いし楽なのだ。

今日は父親のリオンも半休を取ったため、少なくとも午前中は休みとなっている。
その為、イリューシアの見送りには夫婦揃って来ていた。

「イリューシア、あまり羽目を外し過ぎないのよ。母はそこだけが心配です」


「んもう、大丈夫よマム!私だってそこまで馬鹿じゃないわ!」

自 覚 が な い 馬 鹿

どうしてくれよう、とアネフィモラは頭を抱えつつ、そういえば、とイリューシアに向かった。

「あなた、私が書いてあげた許可証はちゃんと持っているの?また無くしたなんてことは…」

「大丈夫だってば!えーと…ほら!」

そう、昨日はこの許可証が無くて騒いでいたのだ。さすがに昨日の今日で無くすなんてことは無いと思いたいが、何しろイリューシアである。
当日になってから

無くした!や、忘れてきちゃった!

なんてことも少なくない。
だからつい心配になってしまったのだが、今回は大丈夫そうだった。

「あるなら良いのよ。ほら、イリューシア、行ってきますと行ってらっしゃいのハグとキスをちょうだい」

そろそろ出発の時間も近いため、乗り込んだ方が良さそうだ。
そう判断したアネフィモラは、娘に言った。

「うん、マム」

この場合のキスと言うのは、lips to lipsではなくlips to cheekのことだ。

「イリューシア、マムだけじゃなくて僕にも、」

「勿論!」

一人ずつ、ぎゅうっとハグをしてちゅっと頬にキスをしていく。
これをしているとなんだか周りにすごく見られるのだが、それももうイリューシアは気にならないし、両親も全く恥ずかしいなどの感情は無く、当たり前のことになっていた。

それよりも……

「…Mummy…Daddy…ふ、うぇ……」

まーた始まった。

アネフィモラはつい、そう思った。
なんせこれは、各休暇が終わる度に毎回毎回起こる、“突然寂しくなっちゃうそれ”なのだ。
この年になってマミーダディーだなんていつもならふざけてる時以外はしないが、今は真剣そのものなのである。

「こーら、泣かない!もう、こんな時だけ泣き虫ねぇ…」

どうしたものかと考えあぐねるアネフィモラの横では、やや困ったように笑顔を浮かべるリオンがいた。
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