一軒

□お前が覚えてなくても
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「のぉ、柊(シュウ)。」




「んー?油揚げか?」



「違うわい、誰がそんなもの。」



「ん。」




目の前に3枚入りの油揚げを突き出すと、そいつはダラダラとヨダレを垂らした。




「それやるからくっつくな。
俺今忙しいんだから。」



「またぱそこん、とやらか。つれないのぉ。」



ジジくさい口調にもかかわらず見た目は二十代後半の色男。自称年齢は200歳とちょっとらしい。




「少しぐらい味見させてくれ。」



「毎日してんだろ、1日くらい休ませろ。」





人間の耳にあたる部分は、白い毛の生えた狐の耳。というかこいつが狐だ。




「そんな飽きないのかね、オキツネサマ?」



「儂を愚弄するか!!!」


「だったら?」


「…ぐっ…。」







狐の神様だかなんだか知らないけど、俺がこいつをいじっても害がないのは、こいつが俺に惚れているから。…らしい。





「…どーせ発情期の勘違いだって。」





男なんかフツー手出さねーし。発情期って要は繁殖本能だろ。男じゃ繁殖できねーよ馬鹿たれ。







「だから毎日違うと言っとるだろうが!なぜ信じぬ!?」



「裏が神社だからってフツー人の家来るか?仮にも神様だろお前。」





家っつっても、アパートの一人暮らしだけど。





「んっ、ちょ……近付くなって。」





「柊…儂はお前を愛しているのだぞ。」




「おい、ツネ…やめろって。」



「そのオナゴのような呼び方はやめろといつも言っているだろう。」




…別にキツネだしいいだろ。





頭の中でそんなことを考えながら、データの破損を防ぐためにノートパソコンをそっと閉じた。













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