一軒

□よろしいでしょうか
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「旦那様…旦那様、朝でございます。」





私が旦那様と呼ぶこちらの方は、22歳にして柳田カンパニーの若社長になられた、柳田冬馬(ヤナギダ トウマ)様。



一通りの朝食の準備を済ませ、旦那様が目覚める頃に紅茶を淹れる。





「……あと30分…。」




「…お目覚めのキスでも致しましょうか?」




「おはよう春田(ハルタ)!!!」



「おはようございます、旦那様。」




私は旦那様ににこりと笑いかけた。
少し青ざめたその顔、何度見ても飽きません。








「んーっ…いい香りだ、新しく仕入れたのか」




「はい、気に入って頂けると良いのですが。」







「…ん、うまい。アールグレイか?いつもより少し酸味が強いが。」




「いえ、大変似ておりますが、レディグレイの方を淹れさせていただきました。…お気に召されませんでしたか?」





私が少し不安そうな顔をしたその瞬間、旦那様は盛大な舌打ちをされた。





「うまいって言っただろ。そもそもお前が選ぶ紅茶にハズレはねーからな。」




「恐れ入ります。」



「ん。」





私がそう答えると、顎を突き出し、腕を思い切り開いた。





「はぁ…お着替えはそろそろご自分でされたらいかがですか?」




「うるせぇ、俺の1日はお前の紅茶と世話から始まるんだよ。」






……光栄なのか光栄でないのかわかりません。







私は旦那様のナイトシャツのボタンを一つづつ外していき、ハンガーにかけてあるワイシャツに旦那様の腕を通した。





「お前さ、そんな手袋してよくそんな器用なことできるよな。外せばいいのに。」




「外してもよろしいのですよ。ただ旦那様の肌に私めの指が直に触れることになりますがよろしいでしょうか。」




「……お前って本当変態だよな。」



呆れ顔でこちらに冷たい視線を送る旦那様。






……私だって25の男です。健全です健全。











申し遅れました。
私、柳田カンパニー若社長執事をさせていただいております。春田凛(ハルタ リン)と申します。










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