一軒
□やめてよ
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………………………。
長い…沈黙が長すぎる…!!
気まずいことこの上ないんですけど。
何か…何か話題を…!
はっ…まだ名前を言ってなかった!
「「…お前…杉野篤哉(スギノ アツヤ)……だっけ…。」…はい、そうです。」
思っきし遮られたというか、被ったというか。
にしても荒嶽くん、間が多いと思う、とても。単語で喋るのね。それともあまり人と喋らないとか…なのかな?
「だから……敬語なしって…。」
「す、すみません…。」
「…ん…。」
思わず敬語が出てしまった僕の顔の前に、荒嶽くんの拳が突きつけられた。包帯が指先までぐるぐるに巻きつけられて、赤く滲んだ痛々しい手。……って、え?
「…次敬語使ったら……鼻折る…。」
「ひっ……。」
僕がうっかり変な声を出した瞬間、荒嶽くんの表情が変わった気がした。…気がしたっていうのは、前髪が長くて表情が見えにくいから。
「ごめん……冗談のつもりだった…。」
「僕こそっ、ごめん…!
変に気遣って、荒嶽くんだよね…?
よ、よろしく…。」
「…俺の名前…知ってるのか…。」
「エ"ッ、ごめん!」
「……怜也…でいい。」
「え、やっ…でも…。」
「…怜也が…いい…。」
「れっ、れーや!!」
「…?」
…しまった、無駄に名前を呼んでしまった。
「…そろそろ…立てるか…?」
「あ…」
めっちゃ忘れてたけど、僕…腰抜かしてたんだ。
心配してくれたのかな、僕のこと…。
や、普通に考えて心配してたに決まってるしょ。
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