一軒
□やめてよ
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路地裏で足を投げ出して放心状態で座っている男がいた。
「…。」
あ、目があった。
同じクラスの、杉野篤哉……だった気がする。
目あったけど、青い顔をしてすぐに逸らされてしまった。
「……ん…?」
顔、ケガしてる…。
あんな傷、殴られてできるもんじゃない……蹴られたのか、顔を。
俺は心配でソイツに近付いた。
近づくたびに後ずさるのは悲しくなるからスルーしたのは言うまでもない。
どうやらコイツはカツアゲにあっていたらしい
話すたびにビクビクするその姿を見て、俺は少しだけ悲しくなった。
コイツも結局は見た目や噂に惑わされるそこら辺のヤツと一緒。冗談のつもりで言った言葉も本気で捉えられてしまう。
だから、少しでも仲良くなりたくて、名前で呼ばせた。怜也…結構気に入ってるつもりだ。
「…そろそろ…立てるか?」
「あ…」
しょうがない奴だ…。
「…おぶってってやるよ……篤。」
名前で呼ぶと、こいつは顔を真っ赤にした。
…え、なんで…。
「…あっ、…あの…その…」
「…ん?」
「あだ名…初めてで…。」
ちょっと嬉しかった、と頬をかく杉野篤哉。
か、かわい……。
「かかかか帰りましょう!!!」
どもりすぎじゃねぇ…?
「…ん…帰ろー。」
俺は篤をおぶり、その上で道案内をしてもらい家まで送るという彼氏的任務を成し遂げた。
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