一軒
□強くねーよ
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キーンコーンカーンコーン
SHR終了のチャイムが鳴り、俺はいつも通り、机の横にかかっている道着が入っている手提げと、教室の後ろに立てかけてある弓を手に教室を出た。
三年生がとっくに引退した今、俺は副部長を任されている。別に弓が天才的に上手いわけではなく、部長曰く弓道部の評判を上げるため、らしい。
俺も副部長の仕事は悪くないと思っているし、自分でも気に入ってる役目だ。
「あ、前原君ちょっと待ってください。」
「…。」
俺のこめかみがピクリと動いた。
この裏表ゆるふわカール教師。
本当に見ているだけでイラつく。
しかも今日に至っては話しかけられた。
というか出張は中抜けなのか、早退しろよ。
「…なんでしょうか。」
「後田くんの自習課題が出ていないのですが、学級委員なのに。なんでですか?」
「…逆になんで俺がそんなこと知ってると思ったんでしょうか。」
「え、だって隣の席じゃないですか。隣の席なら何してたか見えるでしょうし、ねっ?」
…いちいち腹立つ野郎だな。
部活に行かせてくれ。
「俺は何も知りません。あらかた天津先生のこと考えて上の空だったんでしょう。」
「え、なんで僕なんかのことを?」
いい加減スッピンを見せたらどうだ。
…後田はサプライズと言っていたし、あのことは言わないほうが良いだろう。
でも…、純粋で頑張り屋な彼奴の気持ちを弄ぶとか、人として許せない。弄んでるつもりは本人にも無いだろうが、知っていて知らないフリをするのは同じようなものだ。
「…あいつの気持ちを考えてやってください」
「え…君……。」
†