一軒
□面倒
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「おっはよー田崎ぃ!」
「……はよ。」
「相変わらず低血圧なこって。
それより聞いてくれよ!俺昨日サーカス行ってきてさぁ!」
「また行ってきたのかよ、飽きないん?」
「飽きねぇよ!とくにあそこのサキタサーカスはなあ、ピエロが一番スゲーんだよ。どこのサーカスもやってる動物たちのショーってのを最後にそのピエロがやっちまうんだ!スゲーだろ!?人間業じゃねーよアレ!」
「どうせなんか仕掛けとかあんだろ。それかお前の目がおかしい。」
「嘘じゃねーって!」
知ってるよ、俺本人なんだから。
「昨日はピエロが火の輪くぐりしたんだ!俺燃えるかと思ってヒヤヒヤしてたんだよ!」
「燃えたんじゃね。」
「燃えてねーよ!スゲー綺麗に跳ぶんだ!」
「おはよー、夫婦喧嘩か?」
「あ、後田おはよ。
つか夫婦喧嘩って何だコラ!」
「あー、夫婦漫才の間違い?」
「ちげーよ!!
ったくどいつもこいつも低血圧かよ。」
「いやもう夫婦でいいんじゃねーか。」
「よくねぇ!」
…よくねぇよ。
「つかお前ほんっと笑わねーよな。
俺中学校から一緒だけど笑ったとこ見たことねーよ。表情筋あんの?」
「あるわ馬鹿たれ。
俺は表情作るのがめんどくせーの。」
「お前よだって声笑ってんのに無表情だし、声怒ってんのに無表情だし、逆にこえーよ。」
「そうか?俺は別に普通。」
「お前のことは聞いてないから。
そーいや俺が毎回行ってるサーカスのピエロも笑わねーんだよ。」
…悪かったな。笑えなくて。
「それピエロ失格じゃね?
客笑かすのが商売だろピエロなんて。」
「なんてとか言うなちんちくりん。」
……ちんちくりん。
†