長編小説

□月に溺れる
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金色の美しい毛並み
9つの尾を持つ大きな狐



ひっそりと大極山に身を寄せていた

もう200年以上も生き続け・・・
元は人だったがいつからかふしぎな力を手に入れたという。

香奈は人だったときの名前。

今は狐牙と名乗っていた


『ひっそり』というわりにはたまに里に遊びに行っていた。

この日もそうだった


数日前からの豪雨で川が氾濫。
まだまだ勢いの衰えない川に狐牙はいた。

流れてきた岩をひょいひょいと器用にかわし、その流れて行く岩に目をやると
紅くぼんやりと光る”なにか”

そのなにかに一直線に向かっていった大きな岩。
その岩が紅い光に近づいたかと思うと一瞬で粉々に砕けた。

「ーー!?」

わけがわからず近づいてみるとそこには
傷だらけの少年がいた。

意識はなく
呼吸も浅い


狐牙は慌てて背中に乗せると
太極山へと気を集中させた


「おかえりねー狐牙ー!」
「それ誰ね?!ひどい怪我ね!!」
「治療するね!治療するね!!」


わらわらと群がってくる同じ顔をした少女たちによろしくね、と彼を託した


思わず連れてきてしまったが大丈夫だろうかと不安になったそのとき

「狐牙ー」


ぴょんぴょんと跳ねてきたのは先ほどの少女。


なぁに?、と顔だけ向けて少女を見る

「太一君呼んでるね!早くくるね!」

やれやれ、と大きな尾で返事をする


********


“お呼びでしょうか?”と心に話しかける。
いわゆるテレパシーというもの

「「お呼びでしょうか?」ではないわい!まーたふらっといなくなったと思っとったらとんだヤツを連れてきおって!」


とんだやつ?と首をかしげる狐牙


「あやつは朱雀七星士じゃ」

だから紅く光っていたのか、と納得する狐牙

太一君の話はこうだ

彼は朱雀七星士の一人だがまだ力を制御できていないし、自覚もない。
彼は身投げをしたが(理由は聞かなかった)
無意識のうちに自分を守ってしまった。
のちにあらわれる巫女のために、力を使いこなせるように修行をさせるつもりだと。

拾ってきたのは私だから責任もってついていろ、とそう言われてしまった。


深くため息を吐く狐牙


しかし七星士の生命力とはすごいものだ。

普通の人間ならこれほどの傷では生きていられないだろう、と感心した


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