長編小説

□月に溺れる 二章
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チュンチュンッー




まぶしい朝日に目を開ける





(・・・・・・・・)



(・・・え!!!!!誰もいない!井宿殿は!?)





そう、狐牙は久々の井宿のぬくもりで深い眠りにつきすっかり寝坊してしまったのだ

井宿もぐっすりねむっている狐牙を起こすのは忍びないと先に部屋を出ていた様子



(初日から寝坊してしまった・・・)


宮廷にお邪魔して初めての朝は気合を入れて早起きしようとしていた狐牙は急いで皆の元に走った



”・・・?”



ただならぬ雰囲気に様子がおかしいのは寝起きでもわかる

ただ詳しい状況を飲み込めない私に
「あ、狐牙おはよー!」
と柳宿だけが明るく挨拶をしてくれた



まだ言葉の通じない柳宿にペコリと朝の挨拶を済まし、顔を上げると旅の準備が出来上がっていることに気づく

美朱、井宿も同然だった


「鬼宿君がいなくなってしまったのだ・・」
と、申し訳なさそうにつぶやくと
これから朱雀七星士を探しにいくのだと聞かされた


美朱の狐牙も来るよね?の問いにどもってしまった



(陛下が一人ぼっちなんて見ていられない)


狐牙は大きく左右に首を振る


その答えが意外だったのか井宿が狐牙に近づいて
「また少しの間離れてしまうけど必ず帰ってくるのだ」
と頭をなでる



あんたら恋人同士みたいねなんて柳宿に冷やかされたけど全然気にならなかった


師弟の絆は深いものだ





3人を陛下と見送ると

「お前も恋をしているのか?」
といわれてしまった

やっぱりこれにも左右に大きく首を振る


[恋なんかじゃない、仲間だよ]

と伝えたいが伝わらないのがもどかしい

「私はしているよ、美朱に・・・」



自分に言われたわけではないのにストレートな愛の台詞に尻尾のあたりがもぞもぞした



それから陛下はやっぱり仕事なんか手付かずでため息ばかりをついていた

隣に座っているしかできない自分が情けなかった



(ふうー)


「!」

いつの間にか狐牙にもため息が移ってしまったな、と星宿が言おうとした時
狐牙が立ち上がって尻尾を振っていた


「狐牙?どうしたと言うのーー」

言い終わる前に


「陛下があまりにもつらそうですので戻ってきてしまいましたのだ!」

とわらっている井宿がいた


「オイラが少しの間身代わりになりますのだ!」

といって
変化してみせた



「ち・・・井宿・・・」


感動している様子の陛下


よかった、とほっとしたのもつかの間


「私は・・・もっと綺麗だ」


「・・・だ?」
(・・・え?)



「目元はもっと切れ長だ、鼻筋ももっと通っている、第一色気たりない!」

変身しなおせ!と迫る星宿に

「だっ・・・これ以上はそっくりになれないのだ・・!!」

と、たじたじの井宿


そのやりとりに自然と口元が緩む


(やっぱり仲間っていいな)


狐牙にそんな感情も芽生えていた




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