長編小説

□月に溺れる
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今日でもう5日。
寝台の横にうずくまって寝るのにも慣れてきた

黙って眺めているのにもいい加減飽きてきた狐牙。

顔を覗き込む・・・



と、目がゆっくり開いた。


「ここ・・は・・・・?」

ゆっくり狐牙を見る彼。


おどろいた様子だが体が思うように動かない。


「君は・・・?俺は死・・んだのか・・?」

ゆっくり喋りだした彼をじーっと見つめて狐牙はどこかにいってしまった


思考がまわらない、考えても自分に何が起きているのかがわからない。
彼はふーっとため息をはいて目を閉じた。

でもやっぱりわからない。


「起きたね!」

声が近い、目を開くと少女がドアップで映った


「!?!?!?!?!?!?」


声にならない声を上げた彼。


「娘娘が説明するねー!!!」

*******************


なんとなく話は理解できた。
先ほどの少女の名前は娘娘というらしい。
太一君という人?にもあったがあまりの迫力に圧倒されっぱなしだった(いろんな意味で)
話を聞いている間に娘娘はどんどん増えてきた。
どうやらこの娘娘という少女はたくさんいるようだ

ここまでは狐牙という狐?が連れてきてくれたみたいだった。

自分が朱雀七星士なのは知っていたがいまいち力の事はよくわかっていなかった。

修行の説明もされたけどよくわからない。

とりあえず早く体力を回復しろといわれた。


それから数日で動けるようになった。
動けない間もそれからもずっと狐がついてきた。
人の言葉がわかるらしく話しかけると反応するのでたくさん話しかけた。

動物相手だと自然と素直になれた

「お前は狐牙というのかい?」

そうだよといっているかのように尻尾を振る

「俺は芳准。俺は大切な人と親友を失ったんだ。俺が親友を殺したんだ。
そして身投げをした。狐牙が助けてくれたみたいだけど、俺には生きている資格なんてないんだ」


クーンと鼻を鳴らす狐牙に芳准は大丈夫だよ頭をなでた。


そうはいったがこの世には大切な人はもういないのだ、と日にちがたつにつれ実感してきた。

そうこうしているうちに修行とやらは始まってしまった。
そんな気分ではなかったのだがどうやら強制的らしい。。。

まずは狐牙を捕まえる事。



さすがに狐くらい捕まえられるさ

と軽く考えていた自分を呪いたい。


「無理だ!!!!!!」

声を荒げる芳准にやれやれとため息をつく狐牙


「だいたい狐牙はもう何年もここにいて修行しているんだろう?たかが何日の俺に捕まえられるわけがない!」

それを聞いて狐牙はプイっとどこかに行ってしまった


「おい!どこいくんだ待てよ!」

後を追うが姿がない。

「ったく」

ドカっとその場に座り込む。

「諦めるね?」

「わーーーー!!!!!!」


いつの間に出たのか娘娘に驚く芳准

「狐牙はずいぶん手加減してるね!術も使わないし瞬間移動もしてないね!芳准好かれてるね!」


「そうはいっても全然だ…俺には無理なんだよ」


「じゃあ諦めるね?」

“諦める”の言葉に黙り込む芳准。

もともと負けず嫌いな芳准。
うーっと唸る。


「狐牙は待ってるね」

「?」

「芳准が心を開くの待ってるね。
狐牙の声聞こえないね?」


「狐が喋るわけ・・・」


「心の声ね!娘娘は聞こえてるね!狐牙は芳准のこと心配してるね!」


「・・・」



「狐牙まってるね!がんばるね!」



「・・・」



心の声か・・・

******************


夜も更けてきたので寝ることにした。

「今日も捕まえられなかったか・・・」

明日こそ、と意気込んで目を閉じる





ーなぜ裏切った!!答えろ!!!ー




「夢・・・か?」


いくらここで修行をしてもあの事実は変わらない
まだ夢にまで見るほど傷は大きい。

何より左目の傷がそれを忘れさせてくれない。


「っーー」


涙が出る。
裏切られた悔しさと悲しみ。
どの感情かわからないがあふれ出してくる。


ビシッ!

「?!」


体が動かない・・・

息もできない・・・!


苦しさで目を細めながらも前を見ると狐牙が自分の上にいた

こんなに近くにいるのに
体が動かない


突然狐牙の体が光り始めた。


その瞬間【あの場面】がよみがえる
何度も何度も繰り返し再生された


「も・・・やめ・・くれ」


ニクイ・・コロシテヤル・・・コロシテヤル・・



「やめてくれー!!」


狐牙の光が消え体の拘束もなくなった。


部屋から出て行く狐牙

「待ってくれ・・・なぜ・・・なぜこんな・・・」

何も言わず座り込む狐牙

月明かりが狐牙を照らす
金色の毛がキラキラ光る


「何かを伝えようとしているのか?」


「あの時・・・狐牙のような力があれば・・・俺はあいつを守れたのか・・・?」


「俺は・・・強・・くなりたい・・・
強くなりたいんだ!」

両手で顔を覆う芳准


“その言葉、待っていた”


「え?」

驚いて周りを見渡す

が、誰もいない。

(狐が喋るわけ…)


“芳准殿、やっと私の声が届いたようだ”


「狐牙?」

“そう、私です”

そばに来る狐牙
直接頭に響く声



“芳准殿、その気持ち忘れないで
強い想いは人を強くする”


「っくーー」


芳准は狐牙を抱きしめた

狐牙も尻尾をふり腕におさまった

*******************
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