ラブライブ(中の人)

□めんどくさくて甘えんぼで。
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みもside


「…」


「…」


「…ねえ、ぱいちゃん」


「…」


「はぁ…」



私、三森すずこ。


只今奮闘中です。


「ぱいちゃん、怒ってんの?」


「…怒ってないし」



明らかに怒ってますよね。


私の彼女、Pileこと堀絵梨子は楽屋の隅で膝を抱えて拗ねている。


なにが原因か。


私ぱいちゃんに何かしたかなぁ…







…ありすぎて頭痛くなってきた。




でも、そんなぱいちゃんが怒るようなことはしてない。



「ねえ、ぱいちゃん」


「…」


「こっち向いてってば」


「…やだ」


「ぱーいーちゃん」


「すーちゃんうるさい」


「顔がうるさいとはよく言われます」



うむ。なにも進まない。



ヴーヴヴ


《新着メッセージ:1件》


「あ、そらだ」


『そら:みもさん。楽屋どこだっけ』



『3階。あとはμ'sってとこ』既読


『そら:雑w了解』


『あとさ』既読


『そら:うん?』


『えりこが拗ねてる』既読







『既読無視しようとすな』既読


『そら:のろけなど聞きたないわい』


『のろけじゃない!』既読


『そら:とりあえず話しなよ。あの子結構甘えんぼなんだから』




「…ぱいさん」


「…」



『そらさん』既読


『そら:めげるな』



早い。


あいつ、私らが見えてるのか。




「ねえぱいちゃん?」


「…」


「…はあ、わかった。私あっちいくね」


「…!」



そらにはめげるなって言われたけど、たまにはちょっと放置してもいいよね。


この子は甘えん坊だけど、甘えたいって自分で言わないし、寂しくても寂しいって言わない。


私やほかのμ'sのメンバーは長年一緒にいるから、えりこが何も言わなくてもわかるけど、今後1人になったときが心配だから。


大げさかもしれないけど、人に察されるまで自分の気持ちを言えないのは早いうちに直してあげた方がいい。



まあ私は意地っ張りな彼女も大好きなんだけどね。



「…」


「行くからね」


そう言ってえりこのそばを離れようとすると、くいっと控えめに服の裾を引っ張られた。


視線を彼女の方に向けると、潤んだ瞳で見つめられて少しドキッとしてしまった。


だけど負けちゃだめだ。



「なぁにえりこ、どうしたの」


「…」


「っ…」



まただんまりだ。


「あのね、えりこ。
私バカだからさ、言ってくんなきゃわかんないんだ」



「…っ、ん……ひっく…ふえっ…」



あー…泣かせてしまった。


けどここまで来たら引き返せない。



「泣いてちゃわかんないよ。どうして欲しいのか言ってごらん?」


「ひっく……うえっ…すーちゃ、」


「うん」


「…ここ、いてほしいっ……」


「ん…」


「しゃべらなくてもいいからっ…ここ、いてほしいっ……」


「ん…よく言えました」



しゃがんでえりこと目を合わせる。


優しく頭を撫でると、再び大きな瞳から涙が溢れて白い肌を濡らした。



「すーちゃっ…だっこ」


「はいはい」


膝に乗せて子供をあやすように背中をポンポンする。


「ひっく…すーちゃ、わたし……ごめ、なさいっ…」


「…うん…私もきつくてごめんね」


「ちがうっ…わたし、すーちゃんにかまって、ほしくて…でもいえなくて…勝手にすねて…ごめん、なさい…」



「もういいんだよ、えりこ」



そっか…えりこは怒ってたわけじゃなくて、構って欲しかったんだ。


気づけなかったな…


「…すーちゃん」


「ん?」



「えっとね…えっと…」


もじもじしながらキュッと私の服の裾を握るえりこ。


チラチラ私を見ては下を向き、また私を見ては下を向く。


なんだこのかわいい生き物は。



「どうしたの?えりこ」


「その…んと…はずかしい、から耳貸して…?」


「ん…?」


両手でトンネルを作って口元を覆うと、私の耳元に近づく。




「すーちゃん……大好き」





反則だ…それは。


普段なら絶対言ってくれない言葉。


愛の言葉はだいたい私から言ってるからね。


いつもは、私が大好きとか愛してるって言うと彼女は顔を真っ赤にして『ん…私も』と返してくる。



えりこ、頑張ったね。


私も大好きだよ。


めんどくさくて甘えん坊な君が、本当に可愛くて、愛しい。





メンバーがくるまであとちょっとかな。



それまでえりこ成分を充電しよう。





ドアの外


そら「2人ともいつまで…まあ仲直りしたみたいだし、いっか」



おわり
 

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