ラブライブ(中の人)

□君が幸せなら
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絵梨子side


「ねー、くっすん」


「んー?」


「うっちー見なかった?朝からいないんだよね…」


「うっちー…見てないな…」


「だよねぇ…ちょっと探して来る!」


「あ、うん!戻ってきたら連絡する!」


「ありがと!」




うっちーのいる場所はわかってる。



絶対あそこだ。




まだμ'sが結成して間もない頃、うっちーがそこで1人でいるのを見つけたんだ。



なぜこんな所にいるんですか、と聞くと、うっちーは少し無愛想に『…落ち着くから』と言った。



朝からいないし、最近元気なかったから、絶対そこにいる。





「…うっちー?うっちーださーん?」



小声で名前を呼びながら一歩一歩その場所に近づいていく。




「…いた、やっぱりここだったね」




「…っ、ぱいちゃん?」




「うっちーみーっけた」




「…なんでここにいるの」




「うっちーを探しに来たからだよ」




「…いみわかんない」




相変わらず愛想がないね、もう。



まぁそんなん気にしないんだけど。



「よいせっ、はい詰めて詰めて。ぱいちゃん隣失礼しますよっと」



「ちょ、なっ…勝手に」



「ねぇ、泣きそうだけどどした?」



「は…?」



「なんかあった?」



「べ、っつに…!」



「あったんでしょ?」



「…っ」



「…えみつん?」



「…っ!!!」




えみつん、と言った途端顔色が変わった。


やっぱりね。



「…ね、えみつんと何があったの…?」



「…っ」



「あ、ごめん…その、無理に話さなくてもいいよ。だけど、泣くのは我慢しなくていいから…ね?」




「…っ、ふ、…ふえ…」



「うっちー…」



「ひっく…ううっ…うぇぇぇん…ぱい、ちゃっ…」



「おっと…よしよし…」



今まで堪えてきたものが溢れ出すように、彼女の瞳から留めなく涙が流れる。


私は何も言わず、彼女の身体をぎゅっと抱き締めた。




「…落ち着いた?」



「ぐすっ…ん…ごめん…」



「ううん。…それで、何かあったのか、話せる、かな…?」



「…っ……えみつんと別れた」



「ぅええ!?また、なんで!?」



「…っ、ふぇ…」



「わぁっ、ご、ごめん!」



「ううん……あのね、えみつんはずっと…みもちゃんが好きだったの…」



「…うん…」



「えみつんがみもちゃんを目で追ってるのはわかってたし…抱かれたときもね、確かに『すず』って言ったの…」



「っ…うん」



「やっぱ…悲しかった…よ」



「…ん……うっちーは、別れて、それでよかったの…?」



「だって、えみつんはみもちゃんが好きなのに私と付き合ってたら…えみつんは前に進めないしっ…私だって嫌だもん…」



「うん…」



「私は…えみつんが幸せならいい…」



「ほんとに?」



「っ…うん…」



うっちーはまた涙を堪えるように唇を噛み締めた。



「…ね、うっちー」



「…?」



「私じゃ、ダメかな」



「へっ…?」



「私、うっちーが好きです。ずっと前から、大好きでした」



「ぱい、ちゃん…」



「付き合って、くれる…?」



「…っ、ごめん、なさい」



「…うん…」



「ぱいちゃんのことは大好きだけど…私、まだえみつんのことが好きだから……中途半端な気持ちで付き合ってぱいちゃん傷つけたら嫌なの…」



「ん…そっか…」



わかってた。


付き合ったら私が今のうっちーのようになると思ったのだろう。



ほんとに優しい人だよ。


自分より他人のこと考えて。



「っ…ごめんなさい」



「謝らないで。だってもしかしたらまだ私にもチャンスあるかもじゃん?」


「ぱいちゃん…」


「うっちーが今はえみつんが好きでも、私はうっちーがフリーの間は1年でも2年でも100年でも待ってっから!」



私がそう言うと、うっちーは今まで泣き顔だったのに少しだけ笑顔を見せてくれた。


「ふふっ、100年って死んじゃうじゃん…」



「いーの!それまでに絶対私を好きにさせるから!」



「…っ!」



「覚悟してろよっ?」



「…っ、うん。ありがと」





まぁ…カッコつけてそんなこと言ったけど、私とうっちーが付き合う日は来ないと思う。


こんなに優しい人だ。


えみつんもすぐ気づくよ。うっちーの大切さ。



うっちーがえみつんの幸せを願うように、私もうっちーの幸せを願おう。



君が幸せなら、それでいいから。



終わり
 

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