ご注文はうさぎですか?

□甘えたな気分です
1ページ/1ページ

リゼside


「すまなかったな…チノ」


「いいんですよ、この嵐の中リゼさんを帰らすなんてできません」


外は雨、風、雷と大荒れな天気。


今日はチノの家に泊まらせてもらうことにしたのだ。


「そういえばチノ、ココアはどうしたんだ?」


「今日は千夜さんの家に泊まりに行っていますよ。定期考査前だから勉強するそうです」


「…大丈夫なのか?あの2人で」


「…そのうちシャロさんも呼ばれるでしょう…」


そう言ってチノはため息をついた。


中1とは思えんな。


「だいたいココアさんは毎回ギリギリになってやるからダメなんです。コツコツやればいいものの…」


「はは…そうだな」


ココア、年下に言われてるぞ。


「まったくもう…あ、リゼさん」


「ん?」


「何か飲みますか?持ってきますよ」


「じゃぁ…コーヒーもらおうかな」


「はい、わかりました」


「手伝うぞ」


「大丈夫ですよ、座っててください」


にこっと微笑んで部屋を出ていくチノ。


あの大人っぽさは普通の中1ではなかなかいないよな…


マヤもメグも年相応って感じだもんな。


「すごいな、このボトルシップ」


たくさんのボトルシップと、ジグソーパズル。


チノはこういうの好きだよなぁ。



「ただいま戻りました」


「おかえり、ありがとうな」


「いえ、ブラックで大丈夫でしたか?」


「ああ、頂くよ」


こくん、と1口コーヒーを飲む。


やはりチノの入れてくれたコーヒーは美味しい。


「そういえばチノ」


「はい?」


「この部屋には、ボトルシップやジグソーパズルがたくさんあるな」


「好きなんです。細かい作業や集中する作業が」


「そうなのか」


「…うちは母がいなくて、小さい頃は父が朝から晩まで働いていたので…友達を作るのも苦手だったから唯一コレが遊び相手だったんです」



「…そっか」


ボトルシップを両手で抱え、さみしそうに微笑むチノ。


…隠してたのだろうか。


甘えたい気持ち、寂しい気持ち。



「…チノ」


「はい?」


「ほら、来い」


「へ?」


両手を広げてみせた。


普段はこんなことしないけど、恥ずかしくてたまらないけど。


なんだかこのままじゃ、チノが一生甘えられない気がして。


甘やかしてあげたい。


そう思った。


「あの…リゼさん?」


「いいから、何も考えるな。来い!」


「え、あっ…はい…//」


すっぽりと私の腕の中におさまる。


強く抱きしめすぎたら簡単に折れてしまいそうだった。


「リゼさん…苦しいですよぉ…」


「うん…」


「リゼさん…?」


「チノ……どうだ?抱きしめられて」


「どうって…」


「もっと…甘えていいんたぞ」


「リゼさん…」


もっと抱きしめる力を強くすると、だらんと下がっていたチノの腕が静かに私の背中に回ってきた。


なぜだろう、鼻の奥がツンとする。


離したくなくて、チノには悪いけど力いっぱい抱きしめさせてもらおう。


「…リゼさん」


「ん…?」


「その…来客用のお布団はあるんですけど…」


「うん…?」


「…いっしょに、寝てくれませんか…?//」


「チノ…」


「なんだか…リゼさんに抱きしめてもらうのがすごく安心したんです…」


とん、と胸に重みを感じる。


私の胸に顔を埋めてるから全然表情は見えないが、たぶんめちゃくちゃ照れてるんだろうな。


「よし、いっしょに寝ような。チノ」


「っ…はい…!」


顔を上げたチノの笑顔が、年相応な女の子にみえた。


そう、その笑顔。


その笑顔が見たかったんだ。


「リゼさん?」


「ぁ…いや、なんでもないよ」



チノにもちゃんと甘えたいって感情があったんだな。


一安心だ。



しかし作者よ。


タイトルは「甘えたな気分です」

じゃなくて、


「甘やかしたい気分だ」


の方がしっくりこないか?



終わり
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ