ジン短編夢

□嫉妬の棘
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「ヘィ、セニョリータ♪」


大型ショッピングモールで買い物を終えたばかりのローズは目を疑った 愛車フェラーリの上に見覚えのある金髪のイケメン男子が、フロントガラスの前に寝そべっていたからだ


トランクに荷物を積み、力任せに閉めるとローズは溜め息をつき天を仰いだ


「ジャック・・ここで何しているのよ」


やや呆れ気味のローズに、ジャックは滑るように車から下りると一輪のバラを差し出し地面に片膝をついた


「あなたの僕のジャックです・・」
「ふざけているの?」


笑いながらローズは、オイルライターとタバコを取り出しキンッと音を立てて火をつけた 
ジャックは立ち上がり彼女に背後に回り、首筋から匂うコロンの香りを吸い込んだ


「相変わらず良い匂いだね〜♪何て香水だっけ?」
「ジャック・・オイタが過ぎるわよ」


タバコを口にくわえ、さっさと車に乗りこむ、ローズの後を慌てて追いかけジャックは助手席に乗りこんだ


「こうでもしないとオレとデートしてくれないだろ?」


フッと嘲るように笑い、ローズは車のエンジンをかけるとアクセルを踏みつけ煙を上げて車を発進させた
独特なエンジン音を吹かし、赤い車が高速で疾走するのを通行人は、ぽっかり口を開けて立ち尽くしていた


「ヒュー♪ご機嫌な車だねぇ〜〜」
「ありがと、ジャック」


車が右折しようと交差点を曲がり、スマホの操作に夢中だったジャックの顔が窓にへばりついた


「ムギュッ!・・姉さん、スピード出しすぎだぜ?」
「ジャック・・あたし、これから仕事よ?途中で下ろすけど悪く思わないでね」
「つれないっスね〜〜いつになったら、オレと正式に付き合ってくれるの?」


ジャックの手がローズの太腿を這い、スカートの中に手を忍ばせようとした瞬間、ローズは彼の手をピシャリと叩いた


「どこでそんなテクを覚えたの?」
「やっぱり、まだあのいけ好かねぇキザ男が好きなんだ?」


座席を後ろに倒し、仰向けにタバコを吸いながらジャックは長い足をダッシュボードの上に乗せた
ジャックの方を一瞥し、ローズは路肩に車を駐車しエンジンを止めた


「あたしと・・一緒にいない方がいいわ。ここで下りて」


銃にサイレンサーを装着している、ローズを見つめジャックは体を起こし肩をすくめた


「別に・・ジンなんか怖くねぇ」
「一緒にいるところを見られると、またうるさいから嫌なのよ・・・」


しばらくローズを見つめ、ジャックは思い出したように懐から一冊の雑誌を取り出した


「すでにあの男は・・怒り狂っていると思うぜ?」


突然、雑誌を目の前に突きつけられローズは目を丸くさせ首を傾げた


「何なの?この雑誌・・」
「袋とじのところを見てみな」


パラパラとページをめくり、ローズはすぐにジャックが何を言いたいのかを理解した


「・・・見たの?」
「あぁ、すぐにあんただってわかったぜ」
「これは・・その、ただの小遣い稼ぎだから」


ジャックは含み笑いを浮かべ車の外に出ると、雑誌を持ち帰り窓に手をかけウィンクしてみせた


「オレは、ちょっと軽はずみな行動だと思うぜ。じゃ、また電話する」


遠ざかって行くジャックの背中を見つめ、ローズは持っていた銃を握りしめ溜め息をついた


「・・・そんなことわかってるわよ」
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