赤井夢

□神に裁かれた二人
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ーーー7月7日 七夕当日

着慣れない浴衣に身を包んだ蓮子は、人で混み合う商店街の入り口で壁に背をつけ赤井秀一が現れるのを待っていた

支度に時間がかかるので少し早めに待ち合わせ場所に来たのだが、もう少し遅めに来れば良かったと後悔し始めていた

どこもかしこも見渡す限り、カップルばかりだ・・・


時折、可愛らしい浴衣を着た子供が駆けて行くのを目にするが、ほとんどが男女で肩を並べて仲睦まじく歩いている
たくさんのカップル達がゾロゾロと、商店街の入り口をくぐって行く中、蓮子の頭の中をある疑問が浮かび上がった


ーーー私と赤井さんって・・どういう関係なんだろう?


正式に恋人同士になった訳でも無いし、彼女という立場でもない
そもそも赤井には、もしかすると付き合っている相手が他にいるのではないだろうか・・?


長い時間をかけてブローした髪をグシャグシャに掻き乱し、蓮子は両手で頭を抱え女性週刊誌で呼んだ記事を思い出していた


ーーーもしかして私・・・セフレってやつになっちゃうの!?


赤井に言われるまま下着を着けてこなかった自分が突然、惨めに思えてきた
悶々と考えこんでいる蓮子の目の前に、浴衣に身を包んだ噂の赤井が現れた


「すまない・・待たせたか?」
「い・・いえ、私も今来たばかりです」


ゴクリと生唾を飲みこみ、蓮子は改めて浴衣姿の赤井を頭のてっぺんから爪先までを見つめた


「す・・すごくお似合いですね」
「ほとんどアメリカで生活しているからな・・・和服はあまり着たことがないんだ。お前の方こそよく似合っているぞ」


赤井に見つめられ、蓮子は下着を着けていないことを見透かされたような気がして、うっすらと頬を赤くさせて視線を逸らした


「出店を回って見てみよう。オレの手に掴まれ」


差し出された赤井の大きな手に遠慮がちに掴まり、離れ離れになってしまわないように身を寄せ合い二人は出店が軒を連ねる大通りを一緒に歩いた
大通りは人で混み合い、一瞬でも手を離してしまったら小柄な蓮子は人の波に押され赤井の姿を見失ってしまうだろう


繋いだ赤井の手が温かくて、うっとりと夢見心地になっている蓮子の鼻先に赤井の広い背中がぶつかった


「−−もがっ☆」
「あぁ、悪い突然止まったりして・・・これをやってみないか?」


鼻を押さえながら、蓮子は赤井が指差す先を爪先立ちをして覗いて見た
店の棚の奥にズラリと景品が並び、おもちゃでできた小さい的が店のあちこちで歯車のようにクルクルと回転していた 小さい的なので命中させるのは見るからに難しそうだ


苦笑いを浮かべ固まっている蓮子に、赤井はニッコリと笑いながら的を当てる銃を渡してきたため拒否権は無く、ゲームをする羽目になってしまった


「お前からやってみろ」


深ーーーく息を吐き出し、片目を閉じ蓮子は歯車のようにクルクル回転する的に狙いを定めた
銃を持ちグラグラと揺れている蓮子の後ろから、赤井の手が銃を持つ手を包みどうすれば確実に的を撃つことができるかを教えた


「足は肩幅に開いて、銃は高く持て・・・銃口をしっかり的に合わせるんだ」


赤井の声が耳元で響き、蓮子は動揺してしまいすぐに銃の引き金を引いた
弾は的外れな場所に当たり、出店の店員は反射的に身を低く屈めた


「引き金を引くのが早すぎたな・・とんでもない方向に弾が飛んだぞ」
「・・スミマセン」


ショボンとしている蓮子の横で赤井は歯車のようにクルクル回転する的をテンポ良く一つ一つ命中させ、今日一番のハイスコアを披露してみせた


「まだまだ、練習が必要だな」


蓮子に景品のぬいぐるみを渡し、赤井は彼女の頭をポンポンと撫でた
銃を構えた時の赤井の真剣な表情が脳裏に焼き付き、胸が締めつけられ蓮子はまともに彼の顔を見ることができなかった


「あ・・ありがとうございます」
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