ジン長編夢

□噂のマティンスキー夫妻1
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太陽が照りつける爽やかな朝
子供達を学校に送り、ヤマダ夫妻は食卓に向かい合って座りしばし二人きりの時間が流れる


やはり会話は弾まず、お互い質問の受け答えをするだけだ
数年前から深刻なセックスレスに悩まれており、二人はセラピーに通ったり色々と試したが良い結果は得られない



マグカップを口に運びながら、コズエは向かいの夫を探るような目で見つめた
夫はいつも通り背広に腕を通し、ネクタイをしめ出勤に備えている



マグカップを食卓の上に置き、コズエは朝刊を読む夫に話かけた



「ーーねぇ、あなた」

「ん〜〜?」

「お隣に新しく越して来た、マティンスキーさんだけど・・どう思う?」



コズエの質問に夫のカズキは朝刊を持ったまま固まり、ゆっくりと朝刊越しに顔を覗かせた


「べ・・別に普通だと思うけど」

「そう?私、どーもあの夫婦は妖しいと思うの」


コズエは腕を組み、全く疑ってない様子の夫に溜め息をついた


「あの奥さんってロシア人でしょ?何で日本なんかに暮らして、あの家を買ったのかしら・・?」

「あ・・あぁ、あの奥さん?綺麗だよな」

「時々、銃声みたいなのが聞こえるし・・本人はリフォーム≠セなんて言っていたけど。それに、あの人の旦那さん見たことある?」



カズキは朝刊を食卓の上に置き、身を乗り出す妻に首を傾げた


「あの背の高い男の人だろ?時々、夜になると黒いポルシェに乗って帰って来るよなァ」

「この前、あの旦那さんがトランクから死体みたいなモノを下ろしているのを見たの!何か目つきも鋭いし、裏の仕事をやってそうよね」

「・・裏の仕事?」


夫の耳元に口を寄せ、コズエは小声で囁いた


「・・・人殺しとか?」


顔をしかめ、カズキはコズエの額を小突いた


「まさかぁ・・お前、考えすぎだろ」

「あなた、私今日こそはあの奥さんにはっきりと告げようと思っているの!」


腕を高く組み、顎を上げコズエは目をパチクリさせているカズキを見下ろした


「何を言うつもりなんだ?」

「だからぁ、話し合ったでしょ〜?夜の声≠ェ激しいから騒音がひどいって伝えに行くべきよ」

「それは止めておいた方が良いんじゃないか?夫婦円満な証拠だろうし、引っ越して来たばっかりでいきなりお隣さんに文句を言われたら居心地が悪いだろ・・」


「で・・でも!私、あの奥さんの声で夜ぜんぜん眠れないの。子供達への教育にも悪いし・・」


腕時計を見るや、コーヒーを一気に飲み干しカズキは椅子から立ち上がり妻の頬にキスをした


「もう時間だから仕事に行って来る。早まった行動はするなよ?」


夫を見送り、コズエは窓のカーテンの隙間から車を洗車しているマティンスキー夫人こと、ローズを盗み見た



ーーー絶対、あの夫婦は何か裏がある・・・・
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