ジン長編夢
□噂のマティンスキー夫妻2
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パトカーのサイレンが朝を迎えたばかりの住宅街に鳴り響く
大勢の人が集まる住宅街の一角
チカチカと点滅を繰り返す、赤いサイレンが目を眩ます
緑色の外壁が特徴的なサカキバラ家の方をグラスを持ったまま、見つめていたローズは唇の端を吊り上げ静かに」ほくそ笑む
彼女の後ろでは、生後4ヶ月の息子を持参して半ば無理矢理に家に押しかけて来たハナザワ チアキが、ペラペラとマシンガンのように最近の出来事などを話し続けていたがバッグに必需品を詰め終え、力任せにテーブルの上に置いた
「じゃ、替えのオムツはこの中に入っているから。ミルクは決まった時間にあげてね?」
最後の言葉だけ、しっかり頭の中に記憶したローズは後ろを振り返り笑みを浮かべた
「任せておいて、息子さんのお世話は。あなたは愛人さんと楽しんで来て♪」
「悪いわね〜〜いつも任せちゃって。例の物≠ヘ必ず手に入れるから、出掛けたこと主人には言わないでね?」
「当然じゃない。あなたは、約束を守るいい人だもの」
チアキを抱きしめ背中をポンポンと叩き、ローズは低い声で囁いた
「だけど・・・なるべく早めにお願いね?」
「そんなに長居はしないから、夕方までには帰るわ」
「そうじゃなくて、頼み事の件よ。ウチの主人が必要だって言っているから・・」
「あぁ〜〜そのことね。でも、町内の住所録なんて何に使うの?」
チアキの背中を微笑みながら押し、ローズはバッグを持たせ玄関の扉を開けた
「ホラホラ、愛人さんが待っているだろうから、早く行ってあげて」
「それよりさぁ〜〜聞いた?サカキバラさんのこと」
一瞬、ローズのサファイアのような瞳が動揺を見せたがチアキは前を向いているためそのことには気づかなかった
「・・・何があったの?」
「何者かに殺されたのよ!息子さんが見つけたらしいけど、喉を切られていたんだって!怖いよね〜〜」
「そうなの・・だから朝からサイレンが鳴っていたのね。何か目撃情報とかはあるの?」
「それが、何〜〜も無いんだって!指紋は全て拭き取られていて、怪しい人物を見た人はいないみたいよ。事情聴収のためあなたの所にも警察が来ると思う・・」
人が集まるサカキバラ家の方を警戒するように見ながら、ローズの頭の中ですぐに愛しい男の姿が思い浮かんだ
「・・すぐに連絡しなきゃ」
「・・え?なに?何か言った?」
「ただの独り言よ♪じゃあ、いってらっしゃい!チアキちゃん」
バタンッと扉を閉め、いそいそとポケットからスマホを取り出しローズは嬉々とした様子でジンに電話をかけた
「ハーーイ♪あたしよ、約束を守ってくれたのね。すごく嬉しい・・あの女が死んで♪」
「オレ達のことを嗅ぎ回っていたからな・・どの道、消すつもりだった」
「残念だわ〜〜殺されるあの女の顔をこの目で見てみたかった」
キッチンに出したままの包丁を手でクルクルと回し、真っ赤なリンゴに突き刺すとローズはそのまま口まで運び横からかぶりついた
「このあたしの手でズタズタに斬り刻んで、解体したかった・・・」
「目立つ行動は慎め。殺しはオレがやる・・てめぇの犯行はわかりやすいからな」
クルリと後ろを向き、スヤスヤと眠る生後4ヶ月の赤子の頬をそっと撫でるローズの表情は恐ろしい狂気に満ちた顔とは異なり、子を慈しむ母のよう優しい眼差しだった
「・・あたしに考えがあるの。あの女に使った凶器を持って来て」
「どうするつもりだ?オレ達だと勘づかれないようにしろよ?」
お隣のヤマダ家の方を向き、ローズは妖艶な笑みを浮かべた
「任せておいて・・ダーリン♪」