恋の乱LB
□愛の言の葉(主人公目線)
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――パタパタ。
庭を吹き抜ける風に、 時折、干し終わった洗濯物がはためく。
(泥で汚れたのをやっと綺麗にできる。良かった)
最後の洗濯物である小十郎の着物の皺を伸ばしながら嬉しげに美弥は微笑んだ。
「あの日は本当に凄い雨だったよね」
着物が汚れるのも厭わず、激しい雨の中を帰宅したため、
ずぶ濡れになった小十郎の姿を思い出す。
髪からポタポタと雫が落ちる少し憂いを帯びた表情と気だるげな雰囲気は、まさに『水も滴るいい男』だった。
しかも、そんな状態になりながら下城して邸へと帰って来たのが、
自分のためだったことまで思い出して頬が少し熱くなる。
(……小十郎様のこと、ますます好きになってる気がする……)
干し終えた小十郎の着物からなかなか手が離せない。
今は戦の気配はないが、一度、戦が始まれば政宗の右腕として戦場に向かう小十郎とは、
いつも一緒いられるわけでない。
それを理解しているから、何らかの形でいつも小十郎と繋がっていたい。
そんな思いから、着物すら愛しくてならない。