恋の乱LB

□愛の言の葉(主人公目線)
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いつまでも起きる気配のない小十郎の様子に、ふと美弥の心に悪戯心が芽生えた。
少しの間、頭を撫でながら小十郎の寝顔を見詰めて実行するか否かを思案する。

(気付かれないよね?)

髪を撫でるのを止めると、手を引いて身を小十郎の方へ傾ける。
長い睫毛に縁取られた目蓋を伏せながら、ゆっくりと小十郎の耳元へと唇を寄せていく。

「小十郎様――大好きです」

どきどきと早い鼓動を打ち始めた胸元を手で押さえて、
いつもなら照れて口に出来ない胸の中の想いを言の葉に乗せて、甘く密やかに囁く。

(……言っちゃった)

緩やかに目を開けると、頬を仄かに染めて照れた笑みを浮かべる。

いつも小十郎のことを想っているが、本人を目の前にすると気恥ずかしさが先立つため、
なかなか気持ちを言葉にして小十郎に伝えることが出来ないでいる。
抱かれている時に、睦言の一つとして小十郎に言わされることが少なくないから、
多分、「好き」だとか「傍にいたい」だとか、そういった本心を小十郎はもっと聞きたいだろうと思う。
でも、色恋事に慣れていない美弥には、今はこうやって眠る小十郎に告白するのが精一杯だった。

少し速い胸の音が心地好く体の中で響く。
小十郎の近くに顔を寄せたまま、緩んだ顔でしてやったりと思っていると、

「――俺も愛してるよ」

とても近い位置から響きの良い低い聲が聞こえた。

「え?」

間の抜けた声を出して視線を声のした方に向けると、
嬉しげに細められた眼差しが美弥を見上げていて、視線と視線が絡み合った。
美弥は動きをピタリと止め、瞬きを忘れて大きく目を見開く。
予想しない事態に頭が真っ白になり、思考が混乱する。

そんな美弥の様子に、小十郎の口角がゆるく上がる。
甘やかな風情で微笑みかけられ、呆けた頭が一気に回転して、美弥はやっと状況を理解できた。
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