カラ松dream
□初めてのお仕事
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待たせたな、カラ松ガール。
いきなりなんだが、ずっとニートだった俺もバイトしようと思う。
兄弟と行ったファミレスの店員に一目惚れしたからだ。
綺麗な笑顔で微笑み、俺のハートをわしづかみにしてくれた罪な人。
彼女ともっと話したくて、どうしたら良いのか悩んでいた時に、バイト募集の貼り紙を見つけた。
なんとか面接も受かり、今日が初日。
「初めまして。リーダーの柊 香月です」
「松野カラ松です…お願いします」
着替えて準備も終わると彼女が笑顔で迎えてくれた。
近くで見ても綺麗な笑顔。
「とりあえず今日はざっと説明しちゃうね…今日は笑顔でお客様を迎えて?何かあっても必ずフォローするから、気を楽にして」
「あ…はい」
「香月…これさ…」
彼女から説明を受けていたら、店長が彼女に話しかけた。
し…下の名前で呼ぶ仲なのか?!
「店長…名前で呼ぶのはセクハラですよ…訴えて良い?」
「良いじゃん…俺お前好きだし、他のヤツには呼ばせてんじゃん」
「他の人は平気だけど私は店長嫌い…虫酸が走る…じゃ、行こうか?」
はっきり物を言う人だな。
これって俺が告白した場合、フラレる時は嫌いと、はっきり言われるわけだな。
そんなこと言われて立ち直れるだろうか?
「松野さん?」
「あ…はい」
「私の話…聞いてました?」
接客していた時の笑顔との温度差…笑っているのに、目が笑ってない。
「す…すみません」
勢いよく頭を下げたら彼女がクスクスと笑い声を上げた。
「緊張しないで笑ってください…きっと素敵な笑顔ですから」
素敵な笑顔…素敵な(以下エコー)
素敵な笑顔は君の方だ、カラ松ガール。
「今日は片付けとご案内ぐらいかな…」
「はい…」
「片付ける時は無理しないで?無理して落として割った方が、怪我しちゃうかもしれないし」
物を壊すよりも俺の心配してくれるのか?!
まさか…俺のことが好きとか(勘違い)
「じゃあ、元気出して頑張ろうね?」
「はい!」
接客業など緊張するが、彼女を見ていられる。その上、ちゃんと見ていてくれる。
仕事って良いものだな。
「お疲れ様…どう?緊張した?」
彼女はパソコンを打つ手を止め、俺を見つめてくる。
「はい」
「でもちゃんと笑顔だったし、すぐ慣れるよ。頑張って」
その言葉だけでやる気が出る。
「明日も私も居るし一緒に頑張ろうね?」
「はい」
「さっきからはいしか言ってないけど、私のこと怖い?」
「そ…そういうわけでは!」
慌てて否定する。
君が綺麗すぎて緊張するのであって、怖いとか全く思わない。
「それなら良かった」
そう言って傍らに置いていたタバコを取りだし火をつける。
「タバコ…吸うんですか?」
「うん。タバコ吸う女は嫌い?」
「いや…似合ってるなと…」
タバコを吸う仕草も綺麗だと思った。
「褒められてんの?似合うのもどうなの?」
「褒めてます!綺麗な仕草だな…と」
自分で言って慌てて視線を逸らす。
彼女が少し赤くなっていたことにも気付かなかった。
「綺麗とか…からかわないでよ」
「からかってませんよ」
視線を逸らしたまま言うと、頭を撫でられる。
「ありがとう…綺麗とか言われ慣れてないから恥ずかしかったけど、嬉しい」
パッと彼女を見ると本当に綺麗な笑顔で笑ってくれた。
それだけで、俺の心はまた彼女でいっぱいになる。
貴女に近付きたいと言ったら、貴女はどんな反応をしますか?
どうか俺を拒否しないで…。
少しでも貴女に近付きたい。
貴女の傍に置いてください。
俺の初恋は貴女だから…。