シリーズ以外の短いお話

□ナイフ
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嘘つき…。

知ってるんだよ。

僕以外に好きな人が居るの。

何で…よりによって兄さんなの?

僕を裏切った罪は大きいんだよ。

二人で僕をバカにしてたの?

楽しかった?

好きだって言ってくれたじゃない。

ずっと一緒に居るって…言ってたじゃない。


兄さんが悪いんでしょ?

君に近付いて…君に優しくして…。

違うの?

君が好きになったの?

どうして?

僕と何が違うの?

同じ顔だよ?

兄さんのところには行かないで…君はずっとずっと僕のもだから。



ねぇ…これが僕の勘違いなら、それで良いんだよ。

でもね…この前、君と兄さんが一緒に居るの見たんだ。

楽しそうに笑いながら、歩いてたよね?

僕が君の隣に居るはずなのに…どうして君の隣が兄さんなの?

わからないよ…兄さんが好きなの?

僕は兄弟の中で一番まともだと思ってたんだ。

常識人だって…。

なのに…僕は君への想いが大きすぎて…過ちを犯そうとしてる。

君が誰かの物になるなんて考えられない。

僕に向けた笑顔で、誰かに笑いかけるなんて…気が狂うよ。

君の優しい手が、他の誰かに触れるなら、その手を切り落としたくなっちゃう。

君の紡ぐ愛の言葉を他の人が聞くなら、その口を縫い付けなきゃ。

君の柔らかな肌に誰かが触れるなら、君のその肌を傷だらけにしなきゃね。

大丈夫…どんな君でも僕は愛せるよ。

例え、その四肢がなくなろうと、その肌が傷だらけだろうと、君の声が聞けなくても…君が僕しか見なければ問題無いんだ。

兄さんなんかより僕を見て…僕に触れて…僕に口づけて…。

痛いのは僕の心。

張り裂けそうなこの気持ちを君が治してくれるんでしょ?

誰にも渡さない。

君が…兄さんを選ぶのなら…。

一緒に逝こう。

一人にはしないよ。

君が居ない世界に意味は無いもの。

最期までずっと大好きだよ。

だから…このナイフは君の胸に収めさせてね。

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