ものがたり

□大江山珍道中
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「散々なことであったよ…」





まるで口から脱魂するがごとく、深い深い溜め息を吐き出す男。





「まったくだ…」





こちらもまた、へたり込むようにして脚を崩し、だらしなく座した男。





「大体、そなたが鬼の腕など斬るからあのようなことになってしまったのだぞ。」





ぶつくさと恨み節を謳う金色眼の男は長旅の疲れはあれど、しゃんと背筋を伸ばしておる。





「そんなことを申すが…喰われようという時に身を護らぬだなどとそんな莫迦な話もあるまいよ。」

「そうね、致し方無かったとしか…」

「まぁまぁ…」

「そう当たらずとも…」

「甘い!!そなたらはそやつに甘過ぎる!!」

「俺たちなど巻き込まれただけじゃねぇか!!」





三人に擁護されるも、二人は未だ噛みついておる。

まったく、いい加減にせぬか。





「…して、何故此処へ?」





――我が屋敷にて。

相も変わらず濡れ縁は、今宵は人の多いことだ。



カルマ殿にフォルテの小僧。

我が友ガブリエルに…





「助力頂いた方に礼と知らせをと思いまして。」

「礼は要らぬ。勅命であったのだからそもそもそなたらから貰うなど可笑しな話であろう。」

「されど…」

「そうっすよリゾルート殿!決して多くはないけど…気持ちくらい受け取って頂きたいっす!」





スピリットに、プロシュート、ペッシ。

この中で生粋の武人はペッシのみというていたらくではあったが、とにかく。





「…まぁ、そこまで申すなら有り難く頂くとしよう。」




















楽士どもに勅命が下された。

代表で命を申し渡されたガブリエルが、頭を悩ませ頭痛を堪えつつ、某“依然帝王はこの我である”と豪語した位と気位の高い阿呆に名を挙げられた者たちへ、その話を持ち帰った。





“フォルテは鬼の腕を取ったそうだな”





みすみす取り返されたその失態の穴埋めをせよ、とのこと。

体の良い脅し文句である。

が、武官からは恨まれ文官どもからは不思議と後押しされたあやつらは、剣の達人ガブリエル、不思議な力を纏うカルマ殿、妖しき楽の音を奏でる豪腕フォルテ、龍の舞人スピリット、あやかしをも魅入らせる麗しの舞人プロシュートに、鉞を持たせれば都一のペッシ――

この六名で、大江山の鬼退治へ向かうこととあいなったのである。






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