時を超えて

□一.新天地へ
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田丸城の大広間には城主の北畠信雄と、その家臣団がいた。その中に一際異質な服に身を包んだ女性がいる。彼女が伊勢に配属されていた吾妻尊だ。
(……どんな子かしら?)
ボンヤリとそんなことを思っていると、
「申し上げます」
遣いの男が大広間に駆け込んで来た。
「吾妻様と同じ紋様を持つ娘が、参りました」
その知らせを受け、尊は嬉しそうに微笑む。
「通せ」
信雄が一言命令すると、男は一礼してから去って行く。
暫くすると、召使達に連れられて1人の若い女がやって来た。若い、と言ってもまだ幼さを残す顔立ちをしている。信雄や家臣団は驚いたように彼女を見つめてる。
少女は正座をし、平伏すると名前を名乗った。
「本日付けで此方に配属されました。安藤ロアと申します」
「面を上げろ」
信雄に言われ、ロアと名乗った少女は顔を上げた。
「……若い。いや、幼いな」
「確かに私は未熟者ですが、日々鍛錬を重ねて参りました。ご迷惑をお掛けする事はありませんよ」
ロアはニコリと笑ってみせる。
「では、よろしくお願い致します」
そしてもう一度、姿勢を正して挨拶をした。

……続く
→あとがき
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