The brand in bloody

□01.千切れゆく鎖
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全員からの視線を浴びて、入室して来た少年はちらりと周囲を一瞥する。
その際に視線が合ったクラスの女子が、はっとしたように頬を赤らめてすぐさまノートに視線を落とす。

少年は柔らかな黒髪に端整な顔立ち。
長身で、かなりの細身だった。
黒のブレザーがさらに彼を細く見せている。
あまりにも整い過ぎたその姿は、現実離れした印象を見るものに与える。

「晁海(アザミ)君、早く席に着きなさい」

名前を呼ばれた少年、晁海晋浬(しんり)は、そう指示した現国の女性教師を暫し見つめてから自分の席へと座った。
それを確認した教師は、再び説明を開始した。

「晋浬、お疲れ」
晋浬の席の後ろの少年が声を掛ける。
「・・・あぁ。どうも」
眠た気な声を彼に返す。
彼の名は卯月(うづき)那砂(なず)。
晋浬とは幼少期からの仲だ。

「仕事、押したみたいだね」
晋浬の右隣の席の長髪の少女、遠寺(とおじ)汐伽(しおか)がノートの板書を止めて話す。
「ちょっとトラブルがあったから・・・」

それを聞いた那砂の左隣の席の少女、梓堂(しどう)凪叉(なぎさ)が、晋浬に飴を放って言う。
「もしかして、式野君のせい?」
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