The brand in bloody

□03.赤き追憶
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「……」
呼んでも反応が無い。
由乃の傍らで、ゴクリと生唾を飲み込む朱威。
此処は、街中よりは怪異が無い。
“異界の住人”が居ない。ただ、その気配はする。
…そして、目の前の晋浬から、異様な空気が放たれている。
暗闇で良く見えない彼。漆黒の制服が、更に彼を闇に溶け込ませている。
此方を向いてくれない晋浬に、由乃は胸騒ぎがする。

「晋浬!!」
「!?」
背後からの声に、二人はそちらを振り向く。
そこには、先ほど帰れと言ったはずの那砂達が乱れた呼吸を整えながら立ち尽くしていた。
「那砂に皆!?どうして帰らなかった!」
朱威が声を荒げる。
「帰れって言われて、大人しく帰れるか!」
「そうだよ朱威君!必死で探してた晋浬が居るのに、それを無視して帰れないよ!」
「汐伽ちゃん…」
汐伽の必死な訴えに、朱威は何も言えなくなる。

彼女等は本当に晋浬を大切にしている。
彼を守ってきたのは、誰よりも彼女達だ。

……この子達には、“世界の現実”を、見せるべきなのかもしれない。

朱威は、無言で由乃に視線を送る。
それを受けて、由乃は那砂達に意を決した様子で向き合った。
彼女の今までに見たことが無い緊迫した表情に、那砂達は身を固める。
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